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老年医学のすすめー5つのMで実践する老年医学の原則―
ハーバード大学マサチューセッツ総合病院 緩和老年医学科指導医 樋口雅也先生
Geriatrics(老年医学)とは?
加齢による多疾患併存(マルモ)・老年症候群に適切に対応
身体機能低下を予防・回復を助け
患者の自立とQOLの向上を目指す
+
家族・介護のサポート
多職種チームによるケア
ケース 85才女性
高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の既往あり、昨日救急外来に発熱、呼吸困難で搬送。肺炎の疑いで入院
適切な抗生剤で肺炎は治ったが、すでに自立歩行できず、経口摂取も少なく、独居していた自宅に戻ることは出来なくなった・・・
高齢者診療・ケア
苦手意識、難しい、複雑、時間がかかる すっくりしない、エビデンスの限界
病気は治ったのに、患者自身は一向に良くならない
病気 → 治す の限界 思考停止
なぜ老年医学を学ぶことは大切?
患者は医療者を選べない→すべての医療者の老年医学スキルアップが欠かせない
Geriatrics(老年医学)を学ぶことで
壁にぶつかったときに考えを続けるためのヒント
カオスの状態でも全体を理解する、俯瞰するための考えの型
↓
高齢者への医療・ケアに向きく合う人の背中をそっと支えてくれる
5つのM
Mind/Mental(認知・精神) 認知機能やメンタル問題 認知症 せん妄 抑うつ
Mobility (モビリティ) 歩行障害 転倒 負傷予防 運動機能の維持・向上
Medication (投薬) ポリファーマシー、処方中止(減薬)処方の適正化、薬剤副作用と薬剤費負担の軽減
Multi-Complexity 複雑症例、多疾患併存、さまざまな認知身体機能低下 複雑な医学的
(複数のコンプレックスな問題) 精神的社会的状況(SDHを考慮した総合的評価と介入)
Matters most(肝心なことは何か)「それ本当に意味がありますか?」「患者家族のためになっていますか?」
など、個々の患者や家族の意向に沿った医療目標(ACP:アドバンス・ケ
ア・プランニング)やケア
表にして考えると
認知・こころ / 身体機能 日常生活動作
歩行・移動
嚥下・咀嚼 排泄機能
中心に多疾患併存
医療・ケアのおとしどころ
クスリ / 困っていること
大切なこと・生きがい
時間が・・・足りません
簡易高齢者アセスメント(DEEP-IN)を使ってみる
Dementia/Depression/Delirium+Drug (認知+薬)
Eye&Ear (聴力+視力)
Physical function &F(p)all (身体機能・転倒)
Incontinence (排泄機能・失禁)
Nutrition (栄養、体重減少)
ケース 90才男性
90才独居男性 新規患者にて初めて外来に
既往相として安定した高血圧と糖尿病。善意が退職したため、新たなかかりつけ医を希望し、受診した
ポイント
コモンなことはコモンに起こる
高齢者診療のキモ 老年症候群
コモンなことに狙い撃ち
せんもう 認知機能低下 転倒 失禁 抑うつ 聴力・視力障害 体重減少 嚥下障害
ポリファーマシー 機能障害・フレイル 多疾患併存
ケース2にDEEP-INを実践してみると・・
90才 独居男性 認知症は指摘されたことはない
視力・聴力ともに日常生活に多少支障をきたす程度の障害・ADLは自立
転倒歴はないものの歩行安定せず、杖歩行
服薬記憶が少し曖昧(お薬手帳は持参)数種類の薬は使用目的不明
また高齢者で副作用のリスクが高い薬が3種類(NSAIDs、ベンゾジアゼピン、抗ヒスタミン入りの風邪薬)
尿、便失禁も夜ベッドに入ってから夜間に2回ほどトイレに
1年で5kgの体重低下と食欲低下あり
既往相としては安定した高血圧と糖尿病として前医からいわれている患者が、新たなかかりつけ医を希望して
受診した
まとめ
Geriatrics(老年医学)とは、
5つのMで高齢者への医療・ケアをよりよいものにする型
老年医学を学ぶことはあなたの医療・ケア実践を支えます
限られた時間でも老年医学は実践できる DEEP-INを実践してみると・
2023-09-24 05:35:34
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COVID-19パンデミック下でのインフルエンザ診療 倉敷中央病院呼吸器内科部長 石田直先生
一部のみ列挙
新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの重症化率等について
重症化率 参考 致死率
60歳未満 60歳以上 60歳未満 60歳以上
新型コロナオミクロン流行期 0.03% 2.49% 001% 1.9%
新型コロナ デルタ流行期 0.56% 5.0% 0.08% 2.5%
季節性インフルエンザ 0.03% 0.79% 0.01% 0.55%
SARS-CoV-2と同時感染 Lancet 2022年
呼吸器管理 他の要因を調整していないデータ 調整したデーター
アデノウィルス 1.22倍 0.64倍
インフルエンザ 1.68倍 4.14倍
Rsウイルス 1.05倍 0.78倍
入院率 他の要因を調整していないデータ 調整したデーター
アデノウィルス 1.60倍 1.53倍
インフルエンザ 1.49倍 2.35倍
Rsウイルス 1.20倍 0.60倍
インフルエンザは自然経過でよくなる self-limitedな疾患である
一部の患者に重症化のリスクがあり、急性脳症や2次性肺炎などを発症し、生命の危機がみられる場合がある
2018年 インフルエンザ臨床ガイドラインより
5才未満(とりわけ2才未満)の幼児
65才以上の高齢者
慢性尾肺疾患(気管支喘息を含む)心血管疾患、腎疾患、肝疾患、血液疾患、代謝性疾患(糖尿病を含む)
神経疾患(脳障害、脊髄障害、末梢神経障害、筋障害、てんかん、脳卒中、精神遅滞、中等症度以上の発達異常、筋委縮、脊髄外傷を含む)がある患者
免疫抑制状態の患者(免疫抑制剤治療を受けているあるいはHIV感染を含む)
妊婦および出産後2週以内の産褥婦
アスピリンまたはサリチル酸を含む薬物治療を受け、ライ症候群のリスクのある18歳以下の患者
アメリカンインデアン/アラスカ原住民
BMI40以上の肥満者
ナーシングホーム等の長期療養施設入居者
インフルエンザの合併症や関連疾患がおこる理由
小児では、記憶免疫がまだ備わっていない初感染時などには、まれに過剰な自然免疫応答によるサイトカインストームから脳症に至り、重症化することがある
高齢者では、ウイルスの排除が速やかに行われないことにより、呼吸器上皮細胞が傷つき、細菌性肺炎などの
インフルエンザ関連合併症を引き起こすことがある
サイトカインストーム ウイルス防御が速やかに行われない
↓ ↓
脳症 肺炎
インフルエンザウイルスが2次性細菌性肺炎を引き起こすメカニズム
インフルエンザに感染する
↓
ウイルス感染に伴い、気道・宿主に生じる変化
1気管・気管支の物理的バリア機能が破壊される
2気管・気管支の線毛の機能が低下する
3ノイラミダーゼの働きでレセプターが暴露され、肺炎球菌の付着が増加する
*ノイラミニダーゼ(Neuraminidase)はシアリダーゼとしても知られ,ポリサッカライド鎖の末端にあるシアル酸残基を加水分解する酵素です。主に細菌やウイルスのような微生物で発現しています。
ノイラミニダーゼにより開裂したシアル酸残基は,インフルエンザウイルスによる感染において,粘膜内壁への侵入,標的細胞への浸潤,感染細胞からの子孫ウイルスの放出および自己凝集の抑制など,いくつかの役割を果たしていると考えられています。そのため,ノイラミニダーゼ阻害剤はインフルエンザ治療薬(タミフル)として使用されている
4宿主の免疫細胞が機能不全を起こす
5宿主の免疫系に調節異常が生じる
↓
肺炎球菌や黄色ブドウ球菌による2次感染が起こる
↓
細菌性肺炎、敗血症、ショックなどを引き起こす
*余談 インフルエンザ脳症について
15年以上前 私が研究会を積極的に聴きに行くきっかけになった講演会を思い出します。
徳島大学疾患酵素学研究センターの木戸 博先生の講演会はすばらしくとても興奮したことを覚えています。
簡単に昔のノートに走り書きした内容を参考に・・一部分のみ抜粋
インフルエンザ脳症は、乳幼児がインフルエンザに感染して39〜40℃の高熱が続いた後、突然幻覚、意識障害などの中枢神経障害と重篤な脳浮腫を伴って発症する致死性の高い疾患で、後遺症も多く報告されている。発症は日本人の小児で多く報告され、コーカサス人種では少ないことから、数年前までは日本人の遺伝的背景が発症に深く関わっていると推定されてきた。「インフルエンザ脳症の解明に取り組み始めたころ、インフルエンザ脳症で亡くなったある少女の検体が届き、解明に役立つならばと検体を提供していただいたことが解明の突破口を開いてくれた」と熱く語られ、
エネルギー代謝に関連する様々な酵素活性を調べたところ、40度以上の発熱の前後で、活性に大きな変化がみられる酵素CPT-IIを見つけられました。
40度以上の発熱後の検体では、CPT-IIの先天性酵素欠損症に。発熱前の検体では、CPT-IIの酵素活性は軽度の低下を認めたものの先天性欠損症レベルにはなかった。
CPT-IIには熱に不安定な表現型があり、遺伝子多型の解析を進めていくと、インフルエンザ脳症の病態の中心像は血管膜の透過性亢進による脳浮腫と脳圧の異常亢進であること、エネルギー源として脂肪酸を優位に利用する血管内皮細胞で乳幼児期に障害が現われやすいこと、さらに脂肪酸代謝酵素が熱に不安定な表現型になっている遺伝子多型(熱不安定性表現型)がある患者に重症化例が集中していることを明らかになった。
なぜCPT-IIの酵素活性が低下することが脳症発症の引き金となるのか
インフルエンザに感染すると、サイトカインの産生が高まるとともにミトコンドリアのATP産生が影響を受け、もともとある糖代謝と脂肪酸代謝の2経路のうち、後者の脂肪酸代謝の依存度が増す。この状態で、高熱の影響で脂肪代謝酵素であるCPT-IIの活性が落ちていくと、ATP産生の2経路がともに回らなくなる。結局、細胞内ATPが低下してエネルギー代謝障害の状態になってしまう。この影響は、エネルギー代謝の最も盛んな神経細胞、心筋細胞、血管内皮細胞で出始めるが、血管内皮細胞の中でもミトコンドリアが特に多い脳の血管内皮細胞で敏感に影響が現れる。 エネルギー代謝障害になると、細胞間をつないでいるタイトジャンクションの崩壊を招き、血管膜の透過性亢進による脳浮腫と脳圧の異常亢進へと発展していく
そのため直ちに取るべき対策は解熱
目の前の患児がCPT-IIの遺伝子多型かどうかは、日常診療での把握はむずかしいなぜなら熱不安定性表現型の患児は、日常生活においては異常がみられない。
直ちに取るべき対応は、解熱剤の使用、早急に熱を下げるべき。通常のCPT-IIの細胞内半減期は18時間であるのに対して、熱不安定性表現型CPT-IIの半減期は6時間に短くなる。細胞は弱い酵素を補うために6時間で半分の酵素を入れ替えて定常状態を保っている。この酵素に、40~41度のストレスが数時間変わっただけで、急速に酵素は失活することが明らかになり、遺伝子多型の種類、組み合わせなどで、失活の速度にばらつきはあるものの、1~2時間で急速に落ちていくことを考えると、40~41度の高熱になったら直ちに熱を下げる処置をとるべきである。インフルエンザ感染ストレスは、エネルギー産生系の依存度を糖代謝から脂肪酸代謝に切り替えるが、この変化に対応できないCPTⅡの熱不安定性遺伝子多型患児では、そのエネルギークライシスとして、脳の血管内皮細胞で強い症状が現われてしまう。脳症を血管内皮細胞のエネルギークライシスの結果ととらえると、治療のターゲットが見えてくる。
*メフェナム酸・アスピリン・ジクロフェナクなどの解熱剤は脂肪酸のβ酸化を阻害するので×
インフルエンザ感染の重症化は、「インフルエンザ−サイトカイン−プロテアーゼサイクル」によって引き起こされる。
特に、このサイクルが回転しやすい臓器が、肺、血管内皮、脳で、中でも血管内皮細胞でこのサイクルが回転すると、基礎疾患として血管内皮細胞に障害のある患者、エネルギー代謝に弱点を持つため、血管内皮細胞障害の現れやすいヒトが重症化する。
インフルエンザ感染に対する生体応答:最も早い生体応答が、炎症性サイトカインのTNF-α、IL-6、IL-1β等の誘導で、感染後1〜2日をピークに増加して、続いて起こる様々な生体反応の引き金を引く。その一つが生体防御系(自然免疫系、獲得免疫系)の発動で、感染初期の細胞性免疫系と感染4日以後の抗体産生の誘導に代表され、これらの生体応答によってウイルスは体外に排除される。
一方、これらのサイトカインは、生体防御系の発動以外に、体内蛋白質分解酵素のtrypsinとmatrix metalloprotease-9(MMP-9)の発現誘導を、全身の臓器と細胞で引き起こしていることが明らかに。蛋白質分解酵素の遺伝子を持たないインフルエンザウイルスにとって、trypsinはウイルスの感染と増殖に不可欠な宿主因子で、ウイルス膜蛋白質のヘマグルチニンを分解して、膜融合活性を導き出す。ウイルス感染によって、蛋白質分解酵素のtrypsinとMMP-9が全身の血管内皮細胞や臓器で増加すると、血管内皮の異常な透過性亢進、ウイルスの臓器内入と増殖の準備状態が整うことになり、ウイルス感染でサイトカインが誘導され、次いでサイトカインでプロテアーゼが誘導され、プロテアーゼがウイルス増殖を促進するサイクルが回転して、血管内皮細胞の透過性の亢進から多臓器不全に発展する、われわれの提唱している説である。これらハイリスク患者の発症基盤が、遺伝子多型解析と血管内皮細胞の機能解析研究から解明されつつある。 流れるようなお話と熱意が伝わる素晴らしい講演ー印象深い研究会でした。終わった後先生のもとに行き必死で質問したことを思い出します。
日本呼吸器学会インフルエンザ・インターネットサーベイ
協力医療施設にてンフルエンザと診断され、肺炎もしくは入委員となった患者症例(16歳以上の患者)対象
2015年から開始 今年9年目のシーズンに
2015-2019年シーズンにおける入院患者の年令分布
80代 >70代 > 90代 >60代 30-40代で入院が比較的多いシーズンもあった
50人程度 40人程度 20人程度 10-15人程度 5-8人程度
重症化を病態(重複を含む)
市中肺炎 409(44.3%)
医療介護関連肺炎 94(10.2%)
気管支喘息発作 38(4.1%)
COPD急性増悪 19(2.1%)
間質性肺炎急性増悪 6(0.6%)
気管支炎 4(0.4%)
心不全 22(2.4%)
尿路感染症 5
急性腎不全 5
横紋筋融解症 9
脳症 6
全身状態不良 252(27.3%)
社会的入院 39(4.2%)
登録患者の基礎疾患(2015-2019年シーズン)
基礎疾患なし 58人
慢性呼吸器感染 62人
慢性心疾患 42人
膠原病 18人
代謝疾患 42人
悪性腫瘍 38人
妊娠 1人
肥満(BMI40以上)1人
脳血管疾患 15人
慢性腎不全 14人
長期療養施設 16人
免疫抑制薬投与 18人
91人基礎疾患がなしでは肺炎球菌肺炎やインフルエンザウイルス肺炎が多かった
患者が重症化するかどうかを病初期に判断することは困難
ワクチンをうつ しかし効果がシーズンによりばらつく35-65%
インフルエンザ治療の基本
症状緩和 罹病期間の短縮 合併症の防止 周囲への伝播抑制
オセルタミビル プラセボ
下気道感染 65/1544 110/1263 0.56 44%の減少
入院 9/1329 22/1045 0.37 63%の減少
ノイラミニダーゼ阻害剤薬剤開始日別の生存率
早ければ早いほど生存率は上がる
2009年パンデミック時の新型インフルエンザによる死亡率の各国の比較
人口10万対死亡率 死亡者数
米国 3.96 12000
カナダ 1.32 429
メキシコ 1.05 1111
オーストラリア 0.93 191
英国 0.76 457
フランス 0.50 309
ニュージーランド 0.48 20
日本 0.15 198
妊婦新型インフルエンザ感染リスクと抗インフルエンザ薬使用頻度、ワクチン接触後の国際比較
日本 アメリカ カナダ オーストラリア(ニュージーランド)
母体死亡(人) 0 56 4 7
入院患者 0.5-1倍 5倍 7倍 7.4倍
抗ウイルス薬
使用率 95% 85% 81%
2日以内の使用率 88% 43%
ワクチン接種 67% 13%
インフルエンザの治療については、原則として早期診断早期治療が原則
我が国では抗ウイルス薬が、症状緩和目的で軽症の外来から投与され、その結果として重症化や入院の
必要性の抑制につながっていた
ハイリスク患者には発症後48時間を超えても投与を検討する
発症早期に重症化するかどうかの判断は困難であり、もし医師の判断により抗ウイルス薬の投与
を行う場合でも、症状の増悪があればすぐに受診するように指導することが必要




2023-09-23 07:45:38
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運動誘発性ホルモンがアルツハイマー病の抑制に有望か 2023年09月21日 MEDICAL TRIBUNE
運動中に分泌されるホルモンを用いた治療法が、アルツハイマー病(AD)に対する次の最先端治療となるかもしれない。運動により骨格筋から分泌されるイリシン(irisin)が、ADの特徴であるアミロイドβの蓄積を減少させる可能性が、米マサチューセッツ総合病院(MGH)Genetics and Aging Research UnitのSe Hoon Choi氏らの研究で示唆された。この研究の詳細は、「Neuron」に9月8日掲載された。
運動がアミロイドβの蓄積を減少させることは、ADモデルマウスを用いた研究によりすでに示されていたが、そのメカニズムは不明だった。運動をすると、骨格筋からのイリシン分泌が促されて、その血中濃度が上昇する。イリシンには脂肪組織中の糖と脂質の代謝を調節し、また、白質脂肪組織の褐色脂肪化を促すことでエネルギー消費量を増大させる働きがあると考えられている。過去の研究で、イリシンはヒトやマウスの脳に存在するが、AD患者やADモデルマウスではそのレベルが低下していることが報告されている。
Choi氏らは以前の研究で、ADの3次元細胞培養モデルを開発し、ADの主要な特徴であるアミロイドβの蓄積とタウタンパク質のもつれを再現させることに成功していた。今回の研究では、この3次元細胞培養モデルを用いて、イリシンが脳内のアミロイドβの蓄積に及ぼす影響について検討した。
その結果、イリシンを投与することで、脳のグリア細胞であるアストロサイトから分泌されるアミロイドβ分解酵素のネプリライシンのレベルと活性化が上昇し、これによりアミロイドβレベルが著しく低下することが明らかになった。過去の研究では、運動やアミロイドβの減少につながるその他の条件にさらされたADモデルマウスの脳では、ネプリライシンのレベルが上昇することが確認されている。
イリシンがアミロイドβレベルを低下させる、より詳細なメカニズムも明らかになった。例えば、インテグリンαVβ5という受容体を介したイリシンのアストロサイトへの結合が引き金となって、アストロサイトからのネプリライシンの分泌量が増えることが確認された。さらに、イリシンがこの受容体と結合することで、重要な2つのタンパク質〔ERK(細胞外シグナル制御キナーゼ)、STAT3(シグナル伝達兼転写活性化因子3)〕に関わるシグナル伝達経路が阻害されることも示され、これがネプリライシンの活性化を増強させる上で重要なことが示唆された。
マウスを用いた過去の研究では、血流に注入されたイリシンが脳内に到達することが示されている。このことは、イリシンが治療薬として有用となる可能性のあることを意味する。論文の責任著者であり、Genetics and Aging Research UnitのディレクターであるRudolph Tanzi氏は、「われわれが得た結果は、運動により誘発されたイリシンの分泌が主要なメディエーターとなってネプリライシンレベルが上昇し、アミロイドβの蓄積が減少することを示すものだ。この結果は、ADの予防法や治療法の開発において、イリシンとネプリライシンに関わる経路が新たなターゲットとなり得ることを示唆している」と述べている。
以前からの報告 *歩行は、なぜ認知症予防につながるのか? 老化脳神経科学研究チーム 自律神経機能研究 堀田晴美
歩行と脳の高次機能
高齢者では、「寝たきりになると認知症になりやすい」といいます。その逆に、「よく歩くと認知症になりにくい」ことが最近の研究によってわかってきました。たとえば、70~80歳の女性の認知機能テストの成績と日頃の運動習慣の関係を調べた研究によると、日頃よく歩く人はテストの成績が良く、少なくとも1週間に90分(1日あたりにすると15分程度)歩く人は、週に40分未満の人より認知機能が良いことがわかっています。しかし、なぜ歩行が脳の高次機能に影響を与えるのでしょうか。この謎に挑むため、私たちは脳の働きに欠かせない脳の血流に注目して研究しています。
脳の働きに欠かせない血流とアセチルコリン
脳が正しくはたらくためには、絶えず十分な血液が流れている必要があります。脳の働きを担う神経細胞は、血流不足にとても弱く、再生能力もありません。高齢者やアルツハイマー型認知症患者では、大脳皮質や海馬(記憶などの高次機能を司る部位)で脳血流の低下がみられます。この大脳皮質や海馬には、大脳の奥から伸びてきてアセチルコリンという化学物質を放出する神経(アセチルコリン神経)が来ています。私たちは、ラットを用いた研究により、アセチルコリン神経を活発にすることによって、大脳皮質や海馬のアセチルコリンが増え、脳の内部の血管が広がり、血液の流れが良くなることを発見しました。また、私たちは、アセチルコリンが、脳を守る重要なタンパク質(神経成長因子)を増やすことを明らかにしました。さらに、アセチルコリン神経の働きを高めることにより、神経細胞のダメージを軽減することも確認しています。つまり、アセチルコリン神経は、脳の健康を維持するうえでとても大切です。
無理せずゆっくり歩く
私たちは、歩行が脳のアセチルコリン神経を活性化して海馬や大脳皮質の血流を増やすのではないかと考え、それを証明する実験を行いました。その方法は、ラットをトレッドミル(ランニングマシン)の上を歩かせて、その際の海馬の血流と血圧を同時に測定するものです。歩く速さを、「遅い」「普通」「速い」の3段階に分けて、それぞれ30秒間歩かせてみます。すると、いずれの速さで歩いても、歩行中の海馬血流が増加しました(図4)。海馬の血流は、歩行開始直後から増えはじめ、歩行をやめると徐々に元に戻ります。血圧は、「速く」歩いたときには著しく上がりますが、「遅い」または「普通」の速さではほんの少し上がるだけです。「普通」の速さで歩いた時に海馬のアセチルコリン量を調べると、増えることがわかりました10。つまり、血圧があまり上がらない程度の無理のない歩行を行うと、海馬のアセチルコリンが増え、海馬の血流が良くなるのです。 興味深いことに、老齢のラットでも、若いラットと同様の結果が得られました11。無理せずゆっくり歩くことは、年齢に関係なく脳の血流を増加させるのです。
皮膚をさすったり関節を動かしたり歩くという運動ができない場合でも、皮膚や筋、関節に刺激をあたえることで、同様の効果が得られることがわかりました。麻酔をかけたラットの皮膚を刺激すると、アセチルコリンを作る神経細胞の活動が高まり、大脳皮質でアセチルコリンが放出され、血流が増加します。からだのどの部位の刺激でも血流増加の効果がみられますが、特に手や足への刺激は効果的です1。皮膚をゆっくりとブラシで擦るような軽い刺激でも、15分続けると血流がとても増えてきます。より人に近い複雑な大脳皮質をもったネコでも、脚の関節を曲げたり伸ばしたり、脚の皮膚をさすったりすると、大脳皮質への血流が増えます。
薬に頼る前にできること
アルツハイマー型認知症の人では、アセチルコリンを作る神経細胞が少なくなっています。そのため、抗認知症薬の多くは、わずかに残ったアセチルコリンの分解を防いで、アセチルコリンを増やす働きをしています。しかし、年相応の物忘れがある程度では、この神経がまだたくさん残っていますので、身体への刺激によってアセチルコリンを増やすことが可能となります。つまり歩いたり皮膚を刺激したりすることで、抗認知症薬と同じ効果が期待できます。アセチルコリンを作る神経が病気で少なくなる前なら、薬に頼らず無理のない日常的な身体への刺激で、認知症を予防できる可能性があります。




1か月に1回に癒し・・
診療や生活に疲れたとき、40年以上の付き合いの大学の同級生4人での食事会はストレス解消には欠かせなくなっています
なんでも言い合える友は貴重であり財産 今宵もおいしい食事と会話でリフレッシュ学生時代に戻ります
2023-09-22 08:07:54
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認知症疾患における漢方治療 川崎医科大学認知症学教授 和田健二先生
認知症の薬物療法の手順
1認知症の診断
2投薬されている内服薬の確認
3薬物療法の必要性の判断
4服薬原酒が可能な環境の確認・整備
5投薬に関する説明と同意
↓ ↓
疾患特異的治療 BPSDに対する治療 合併症治療
神経症状 老年症候群 身体合併症
定量的な評価と見直し 有害事象の有無の確認
認知症の症状 A B C
A 日常生活機能 ADL
B 認知症の行動・心理症状(BPSD)
C 認知機能 (Cognition)
D:介護負担感(Distress)
Cさまざまな認知機能の低下
記憶 エピソード記憶
見当識(状況把握) 時間→場所→人
視空間機能 物の位置、距離、方向 風景
遂行機能 段取り
言語(コミュニケーション)話す 聞く 理解
覚醒・注意
A 日常生活の変化 手段的日常生活活動(I-ADL)
電話 買い物 服薬管理 家事 食事の準備 移送の形式 財産の取り扱い 洗濯
DSM-5
軽度認知障害
毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害しない
すなわち請求書を支払う、内服薬を管理するなどの複雑な手段的日常生活動作は保たれるが・・
以前より大きな努力、代償的方略、または工夫が必要であるかもしれない
認知症
毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する
すなわち請求書を支払う、内服薬を管理するなどの複雑な手段的日常生活動作に援助が必要となる
本人をよく知る情報提供者に聴く
認知機能低下による生活の変化
MMSEスコアー
25 金銭の取り扱いと通信
服用
外出 軽症
食事と家事
電話 中等症
食事の用意
着脱衣、着替え
衛生 重症
接触
排泄
0
B 認知症の行動・心理症状(BPSD)
活動性亢進 焦燥性興奮 易刺激性 脱抑制 異常行動
感情障害 うつ 不安
精神病症状 幻覚 妄想(物とられ妄想:AD) 幻聴(レビー小体型認知症)
アパシー 自発性や意欲の低下 情緒の欠如 不活発 周囲への興味の欠如
アルツハイマー認知症およびMCIにおけるBPSDの頻度と介護の負担
MCIや軽症から出現
焦燥性興奮 抑うつ アパシー 夜間異常行動 食欲食行動異常
重度になれば介護負担度の増加 抑うつ アパシー 夜間異常行動 食欲食行動異常↑↑
認知症の治療目標
認知機能の改善と生活の質の向上を目的
薬物治療と非薬物治療を組み合わせて行う
認知症者への介入 認知機能訓練 認知刺激 経皮的電気刺激療法 運動療法 音楽療法 回想法
ADL訓練 マッサージ、レクレーション 光療法 多感覚的刺激療法 支持的精神療法
バリデーション療法 鍼治療 経皮頭蓋磁気刺激療法 筋弛緩法など
介護者への介入 心理教育 スキル訓練 介護サポート ケースマネジメント
レスパイトケア 介護者とのセルフケア 認知行動療法など
B BPSDにおける漢方治療
焦燥 攻撃性 興奮 抑肝散
不安 加味帰脾湯
アパシー・食思不振 人参養栄湯
抑肝散
怒りやすい イライラ 不眠 神経過敏 興奮 眼瞼けいれん 手足の震え 腹力中等度 腹直筋緊張
アルツハイマー病のBPSDに対する抑肝散の効果
多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験
147名 55-84才 NPIスコアー4点以上
抑肝散7.5g/日 75名 プラセボ 70名
結果のみ
MMSE<20 74才未満 攻撃性/興奮 有意に改善
攻撃性や興奮が中等症や重度 有意に改善
幻覚を伴う患者 有意に改善
副作用 重大でない有害事象 4例 低カリウム血症 1例高血圧
重大な副作用 心不全と胆石症 因果関係否定
レビー小体型認知症
認知機能の変動 はっきりしているときとぼーとしているときがある
幻視 実際そこにいない動物、虫、人が見える 誰かがいるような気配
パーキンソンニズム 体を動かしにくい 手足が震える 歩きづらい 転倒が多い
レム睡眠行動異常 睡眠時に大きな声の寝言や異常行動がある 悪夢
自律神経症状 起立性低血圧 便秘 排尿障害 発汗障害
その他 嗅覚障害 アパシー 宇津気分 日中過眠 長期または再発性せん妄
誤認妄想
レビー小体型認知症のBPSDに対する抑肝散の効果
55-90才未満 zarit介護負担尺度の有意な改善が見られた
抑肝散の薬理作用
セロトニン神経系への作用
アルツハイマー型認知症の患者では、脳内のセロトニン濃度が関係することで攻撃性の上昇が起きていると言われており、抑肝散はセロトニン受容体を刺激することで攻撃性を抑制する働きを発揮しています。
グルタミン酸神経系への作用
認知症の患者には神経細胞の脱落がみられ、その原因の一つとしてグルタミン酸が関与していると考えられています。グルタミン酸が多くなると神経に傷害を起こしてしまうため、過度に上昇しないように抑肝散が調節する作用を持っているのです。さらに、グルタミン酸が結合する受容体に対しても保護するように働くことから、二つの効果を持ってグルタミン酸に影響を与えています。グルタミン酸への作用は、抑肝散の中でも特に甘草によって発揮されているとされています。
抑肝散加陳皮半夏 使い分け 抑肝散より体力が低下し、症状が慢性化して消化器症状がみられる場合
加味帰脾湯
不眠症 精神不安 神経症 貧血など
加味帰脾湯によるAD患者のBPSDおよび感情表現に関する効果
男性18例 女性45例 平均年齢83.3才
オープン研究 28日間処方 7.5g/日
焦燥性興奮 気分障害 不安 脱抑制 易刺激性が有意改善
人参養栄湯
フレイルを伴うAD患者の食欲不振に対する人参養栄湯の効果
20症例 過去6カ月で2-3kg体重減少のAD
人参養栄湯9g/日
食欲不振スコアー有意に改善 12週
有意に食事量増加→フレイルの改善
嚥下障害の対応(誤嚥性肺炎の予防を含む)はどのように行うか
誤嚥性肺炎の発症予防にはACE阻害剤、アマンタジン シロスタゾール
カプサイシン、口腔ケア、嚥下リハ、顎引き嚥下、食後1時間の座位保持
インフルエンザ 肺炎球菌ワクチンなどが有効である
進行期の認知症では経皮的内視鏡胃瘻造設術(PEG)が誤嚥性肺炎の予防や、ADLおよび生命予後の改善に有効
であるというデーターはない
ツムラ半夏厚朴湯
認知症 半夏厚朴湯
大脳基底核× ↓
ドパミン減少 ドパミン増加
迷走神経・舌咽神経の近く低下 サブスタンスP増加
嚥下反射・咳反射低下による 嚥下反射改善 咳反射改善
不顕性誤嚥
半夏厚朴湯の咳反射の改善 偽遠征肺炎への影響 有意に改善




2023-09-21 06:25:56
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糖尿病治療の最終目標達成における初期SGLT2阻害剤の役割
自治医科大学附属さいたま医療センター 内分泌代謝内科 教授 原一雄先生
糖尿病診療の最終目標は健康寿命の延伸
健康寿命の指標としてQALYを採用
*質調整生存年(quality-adjusted life year, QALY)とは、疾病負荷の測定方法として一般的であり、生存における量と質の2点を評価する手法である。医療行為に対しての費用対効果を経済的に評価する技法として用いられる。1QALYは、完全に健康な1年間に相当する。QALYスコアは一般に1(完全な健康)から0(死亡)までの値を取る。もしある人の健康が完全ではないならば、その1年間は1未満のQALYとして算定され、死亡すれば0QALYと算定される。いくつかの状況ではマイナスのQALYも算定され、それはその健康状態が「死亡よりも悪い」ことを意味する。
糖尿病治療の健康寿命への影響を定量化
心筋梗塞 0.88 脳卒中 0.64 失明 0.60 末期腎不全 0.61 下肢切断 0.60
種々の合併症、副作用の包括的、長期的影響を評価
心不全の健康寿命への影響と予防の重要性
心不全による健康寿命短縮4.7年(男) >2,0 がん
6.3年(女) >3.2 がん
心不全 ステージA 心不全の基礎疾患 糖尿病の状態から予防へ
EMPA-REG OUTCOME研究
SGLT2阻害剤が14%有意に3-POINT MACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)を減少させた
心不全による入院を35%有意に減少させた
心不全発現率
ジャディアンス プラセボ群
心不全なし 1.8% (4225) 3.1% (2089)
心不全あり 10.4% (462) 12.3%(244)
SGLT2欠損に起因する疾患:家族性腎性糖尿
SGLT2遺伝子突然変異による稀な疾患
血糖値が正常範囲でも尿中グルコース排泄がみられる 血糖値は正常 無症候性
尿細管機能不全や腎合併症の徴候はみられない 低血糖および体液量減少はまれ
ありふれたSGLT2遺伝子多型と尿糖排泄量
MAF 12,6%(糖代謝正常者) 10.1%(2型糖尿病)
rs993436A
初期から長期間継続したSGLT2阻害の影響の推定
SGLT2遺伝子多型
ランダムに形成(配偶子)
rs9934336A(SGLT2低下型) rs9934336G(SGLT2通所型)
↓ 行楽要因↓↓ 因果関係逆転↓↓ ↓
↓ ↓
疾患 疾患
頻度 頻度
SGLT2低下型保持者の心不全リスクは?
UKバイオバンク(416737人)を利用した解析結果
SGLT2遺伝子多型の種類
rs9934336 0.96 有意に低い
rs3116150 0.96
組み合わせ 0.97
SGLT2阻害の長期的意義(私見)
EMPRISE研究 心不全ステージAから心不全予防
EMPA-REG研究 心不全ステージBから
Emperor-Preserved ステージCから
Emperor-Reduced ステージC,Dから
メンデルランダム化 ステージA前から→
ステージAからSGLT2阻害剤で心不全予防を
エンパグリフロジンの血糖改善の特徴
TIR(70-180mg/dl)の変化 TIR 1日目 28日目
プラセボ 21名 52.1% 57.9% 59.4%
ジャディアンス 20名 52% 66.7% 77.5%へ
SGLT2阻害税のDPP4阻害剤に対する先行投与について
DPP4阻害剤はDPP4を賦活化してGLP-1、GIPを活性化する
正常な膵β細胞は
Gsが主なインスリン分泌促進作用を担う 慢性高血糖がある膵β細胞
アセチルコリン 遊離脂肪酸 ではGsよりもGqが主な分泌促進作用を担う
GLP-1 GIP・GLP-1 Gqを使えないGIPは作用が減弱
↓ Gs
Gq cAMP
IP3 DAG ↓
Caイオン ↓ PKA Epac2
↓ PKC インスリン分泌
インスリン分泌
慢性的に高血糖状態にある膵β細胞において、GLP-1受容体はGqシグナルを用いることでインスリン分泌 作用を発揮するが、GIP受容体はGqシグナルを活性化しないため効果は減弱する
インクレチン効果の減弱
SGLT2阻害剤を先行投与した臨床試験の結果
0から12週 12週から24週 12週 12-24週
DPP4阻害剤 →DPP4阻害剤+SGLT2阻害剤(n=17) 結果のみ HbA1C -1.81% -0.65%
SGLT2阻害剤→DPP4阻害剤+SGLT2阻害剤(n=17) -2.94% -0.86%
SGLT2阻害薬を初期から継続して投与する意義
インスリン抵抗性増大
+ ⇒インスリン作用不足 食後高血糖⇒空腹時高血糖
インスリン分泌能低下 ↓
↑
インクレチン効果減弱 ← ← ← ←
*SGLT2阻害剤がインスリン抵抗性増大抑制⇒病態への包括的影響⇒TIR増大
慢性高血糖解除はDPP4阻害剤効果増大
糖尿病治療薬の処方実態について
BMI (肥満)
SGLT2阻害剤 ⇣ TZD
BG剤
→ → →年齢 (高齢)
⇣ SU
⇣ DPP4阻害剤
AGI
今まではSGL2阻害剤は肥満で若年から壮年に使用される薬と考えられていたが・・・
高齢者
若年者より高率な合併症 老年症候群 薬物治療によるリスク増加
CKD サルコペニア 低血糖
血管疾患 フレイル
心不全 認知機能低下
エンパグリフロジンの年令層別アウトカム
心不全による入院又は心血管死
イベント発生率 プラセボ エンパグリフロジン
65歳未満 7% 5.5%
65-75 11% 7%
75以上 17% 10% 高齢の方が心不全抑制効果大?
副作用リスク メタ解析
性感染症のみ有意に高い
感染症の既往がある女性に多い 23% 男性では10%(既往あり)
高齢者におけるSGLT2阻害剤投与のリスク・ベネフィットは
年齢上がるほど心不全による入院又は心血管死 ベネフィット増加
性感染症の副作用は年齢に関係なくおこる
懸念されるサルコペニアは
慢性高血糖が
細小血管合併症 インスリン GLP-1RA DPP4阻害剤
大血管障害 ↓ 促進
酸化ストレス 抑制へ →筋肉の質と量 抑制 ←グリニド SU剤
AGE/RAGE ↑ 抑制?
インスリン抵抗性 BG剤 SGLT2阻害剤 TZD
*SGLT2阻害剤は低血糖リスクが低く、合併症への影響、インスリン抵抗性への影響への観点から
プラスの影響が期待できるのではないか(私見)
高齢者2型糖尿病におけるSGLT2阻害剤の有効性・安全性の検討
EMPA―EMPA-ELDERLY試験(国内Phase4試験)
わが国の2型糖尿病患者を対象に、エンパグリフロジンの長期投与と血糖降下への効果、安全性、体組成・筋力などへの影響をプラセボと比較した多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間試験である。
【主たる組み入れ基準】
・65歳以上の日本人2型糖尿病患者
・食事療法、運動療法のみ、または経口血糖降下薬(ビグアナイド、DPP-4阻害薬など)で血糖コントロール不十分な患者
【評価項目】
主要評価項目:ベースラインから52週間後までのHbA1c変化量
副次評価項目:ベースラインから52週間後までの体組成(筋肉量、体脂肪量、徐脂肪量など)の変化量、握力の変化量など
【対象患者の背景】(127例)
患者数:プラセボ(63例)、エンパグリフロジン(64例)
年齢平均:プラセボ(74.0歳)、エンパグリフロジン(74.2歳)
平均ベースラインBMI:プラセボ(25.4)、エンパグリフロジン(25.7)
(*BMI22未満の痩身者は非対象として除外)
罹病歴平均:プラセボ(11.8年)、エンパグリフロジン(12.4年)
HbA1c平均:プラセボ(7.6%)、エンパグリフロジン(7.6%)
主な結果
ベースラインから52週間後までのHbA1c変化量推移は、プラセボ群と比べエンパグリフロジン群はHbA1cの低下が52週目まで続いていた。
HbA1c調整平均変化量では、プラセボ群-0.12%に対し、エンパグリフロジン群では-0.69%(調整平均の差-0.57%)とエンパグリフロジン群が有意に低下していた(p<0.0001)。
52週後のベースラインからの体重変化では、プラセボ群が-0.90kg、エンパグリフロジン群が-3.27kg(調整平均の差-2.37kg)とエンパグリフロジン群で有意に低下していた(p<0.0001)。
体組成では、体脂肪についてプラセボ群で+0.08kg、エンパグリフロジン群で-1.77kg(調整平均の差-1.84kg)と体脂肪で大きく変化がみられた(p<0.0001)。
筋力について、握力ではプラセボ群で-0.6kg、エンパグリフロジン群で-0.9kg(調整平均の差-0.3kg)と大きな差はなかった(p<0.4208)。また、5回椅子立ち上がりテスト(秒数)でもプラセボ群で-0.9秒、エンパグリフロジン群で-0.9秒(調整平均の差0秒)と差はなかった(p<0.9276)。
有害事象としては、重症度の軽い低血糖がプラセボ群、エンパグリフロジン群で各1例ずつ報告があったが、エンパグリフロジン群では死亡などは報告されなかった。
以上の結果を踏まえ、「高齢者においても、エンパグリフロジンは血糖コントロールを有意に改善した。また、脂肪量を減らすことで体重を低下させると同時に筋肉量減少などの変化は、プラセボ群と比較し、変化が認められなかった。エンパグリフロジンは忍容性も良好で、新たな有害事象もなかった
SGLT2阻害剤のリスクとベネフィット
リスク ベネフィット 高齢者
DKA(1000人年あたり1人) <<< 心血管死 17人 ↓ 全死亡 34人↓非致死性心筋梗塞14人↓
サルコペニア 心不全 >30人 ↓ 細小血管合併症発症進展阻止
性感染症 末期腎不全>26人
*BMIに関係なくSGLT2阻害剤効果あり(メタ解析)




2023-09-20 05:33:55
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生き物の死にざまーはかない命の物語―稲垣栄作著 ② 人間編




X その生存競争は熾烈を極める
一斉にスタートをきった彼らは長い道のりをゴールを目指して泳ぎ続ける
勝者は1人、それ以外はすべて敗者である この物語の主人公は精子である
体長わずか0.06ミリメートル 人間の場合1回で放出される精子は2-3億個といわれる
ゴールで待ち受ける卵子は1個 勝者になるのは2-3億分の1の確率である
行く手には様々な障害が待ち受けている
膣内は病原菌の侵入を防ぐために、粘液を出しており、また侵入した病原菌を殺すために粘液は酸性に保たれている 酸の中では精子はうまく泳げず、多くの精子はここで動けなくなってしまう
この障害にたった1個の精子の泳力では難しく、群れをつくりながら泳ぎ、協力しながら道をきりひらき、子宮内へと侵入する。中には必死に泳ぐ他の精子の上に乗っかってずるをする精子もいる
途中でレースを参加するのをあきらめて他の精子の邪魔をする者もいる
精子には意思もないのになぜか人間臭い・・・なぜ
無事に子宮内に侵入できる精子はわずか3000個。最初の障害を突破できるのは10万個に1個の精子だけである。次の難関が・・何しろ広い子宮の中から卵管の小さな入り口を見つけ出さねばならない
しかも彼らをはばむものが現れる。異物と認識した白血球が一斉に襲い掛かる
それを逃げ切って卵管の入り口を見つけた先にも試練がある
強運が試される 卵管の先は行く手が二つに分かれ、どちらか一方だけに卵子が存在する
ここに到達できる精子は100個ほどになっている。いよいよ最後の戦いである
卵子の外側には固い殻で守られている。精子は酵素をだしてこの殻を破っていく
この殻を破った精子のみが卵子に侵入して勝者となる
すると突然 卵子は受精膜というバリアを瞬時にはり、まわりについていた他の精子の侵入を阻む
勝者が選ばれたのである 精子を受け入れた卵子は細胞分裂を開始して、ゆっくり回転をはじめ、子宮に向かっていく。愛のダンスを踊っているように見える 。精子が動けるのは48時間から72時間、やがて力つきて動けなくなる。
このような過酷なレースに勝ち抜く自信はあるだろうか・・しかしあなたはこのレースに勝ち抜いた強運な勝者である。そしてあなたはこの世に生を受けた。これ以上に何を望むものがあろうか・・・
ヒト以外の生き物はみな「今」を生きている 人間
人間はまだ見ぬ死を怖がる生き物である
もちろんすべての生物が死にたくないと思っている。危険が近づけば必死に逃げるし、どんな困難な環境でも
必死に生き抜こうとする。しかしいつくるともわからない死を恐れるのは人間だけである
鳥も動物も死の影を恐れることがない
哺乳類は状況を判断して行動するために、脳を発達させた
肉食獣なら獲物の逃げ道を予測して先回りする、草食獣なら追手の動きを予測して裏をかくことができる
犬はお座りしたら餌がもらえるという未来が予測できるから、お座りして待つことができる
未来を予測するため過去の情報も少しは活用する
人間はこの先を予測するという能力を高度に発展させた。10年先のことも考えて行動することもできる
まだ見ぬ世界を予測する「想像力」という力を手に入れた
こんな想像力(未来のことだけでなく何億年もの昔に思いを馳せる事さえできる、みることのない宇宙の果てのことさえ)を持つ生物はほかにいない。人類はこの想像力で文明や科学を発達させてきた
しかし想像力を手に入れたことで問題が・・
すべての生物は未来のことがわからないので今を生きている
人間は未来を想像することができるので、あれこれ想像した挙句、来るかどうかもわからない将来のために、今を我慢して「今」を生きなくなった
自分が死ぬという未来も想像するようになり、挙句の果てには「人は死んだらどうなるのか?」「人はなんのためにうまれてきたのか?」とか考えだす
そして「生きるのがつらい」とか「死んで楽になりたい」とか、とても生き物とは思えないことを言い始める
すべての生き物は「今」を生きている。大切なのは「今」である。今、命があるのだから、その命を生きればいい。ただすれだけのことである
想像することは、悪いことばかりではない。未来を想像できる。未来を想像してわくわくしたり、生きる力が湧いてくることもある
未来を想像することで「今」を大切に生きることもできるはずだ。古人は「希望」と名付けた
希望を持つ唯一の生き物であることも確かである
想像してみよう・・私たちはどのように死ぬのであろう その時どんな気持ちであろうか
充実した人生であろうか、後悔の人生であろうか・・
あなたの死にざまはどんなものであろうか・・ 作者はこの言葉でこの本を閉じている
2023-09-18 19:09:37
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第34回都島メデカルカンファレンスを聴きに大阪市立総合医療センターに行ってきました




地域医療機関から紹介され“認知症”を考慮した診療を要した症例に関する検討 初期急病診療部長 山口利昌先生
一部のみ列挙
認知症は2025年には約675万人(有病率18.5%) 5.4人に1人
ICD-10による認知症の診断基準の要約
G1 以下の各項目を示す証拠が存在する
1記憶力の低下 新しい事象に関する記憶力の減退 記憶力の低下は客観的に確認されるべきである
2認知能力の低下 判断・思考に関する能力の低下や情報処理全般の悪化
1・2により日常生活動作や遂行機能に支障をきたす
G2 周囲に対する認識(すなわち、意識混濁がない)ことが基準G1症例をはっきりと認証するには十分な
期間、保たれていること、せん妄のエピソードが重なっている場合には認知症の診断は保留
G3 次の1項目以上を認める
1情緒易変性
2易刺激性
3無感情
4社会的行動の粗雑化
G4 基準G1の性状が明かに6カ月以上存在して確定診断される
認知症診断の手順
認知症(広義)の疑い → MCI 軽度認知障害
↓
↓ 正常範囲内、加齢に基づくもの
↓ アルコール多飲、薬物、健忘症候群
↓ 急性発症、軽度の意識障害(せん妄)
↓ 機能性:うつ病(偽性認知症)、妄想性障害
↓ 身体疾患(代謝性疾患、内分泌系疾患、感染症)
↓ 脳外科的疾患(正常圧水頭症、慢性硬膜下血種)
認知症(狭義)の疑い
加齢と認知症 物忘れの違い
加齢による物忘れ 認知症による物忘れ
体験したこと 一部をわすれる すべてを忘れる
(例)朝ごはんのメニュー (例)朝ごはんを食べたことを自体
ものわすれの自覚 ある ない
探し物に対して 自分で努力してみつけようとする 誰かが盗ったなど、他人のせいにすることがある
日常生活への支障 ない ある
症状の進行 きわめて徐々に歯科進行しない 進行する
*Head tunting Sign(頭部振り返り現象)
家族の方を振り返って助けを求めるしぐさ 各種の認知症の中でアルツハイマー病が最も頻度が多い
アルツハイマー病は取り繕い 世渡り 上手
HDS-Rの評価中に何度振り返るかの検討
平均年齢 女性割合% HDSRスコアー HTS
アルツハイマー病 79.1才 65% 14.5 42回
AMCI 79.3才 63% 24.8 25回
DLB 77.9才 47% 15.1 15回
PSP 78.4才 38% 14.5 25回
VaD 73.8才 33% 20.5 17回
令和2年~4年後 救急外来患者
副病名に認知症と記載があった患者の主病名・病態
脱水症 5 主訴・症状 意識がおかしい 動けない 息苦しい
肺炎 4 動けない 胸が苦しい +発熱
尿路感染症 2
血糖値異常 2
転倒 1
認知症とのみ記載された患者の主訴・症状
意識がおかしい 元気がない ご飯をたべない 動けない 胸が苦しい 息苦しい
*症例提示 79才女性 意識障害 認知症みたい →肝性脳症 急性発症は他の疾患除外を
肝性脳症で認知症? アンモニアが脳内のアストロサイトでのアミロイド前駆物質蛋白質量増加
→アミロイドβ42増加
*高齢者 体重あたり細胞内液30%細胞外液20% 体重あたりの水分量 50%と最初から低い
成人 40% 20% 60%
乳幼児 40% 40% 80%
アルツハイマー型認知症の進行度と症候
増加する 転倒 誤嚥 発熱 咀嚼障害 排尿障害 悪心・腹痛 振戦
認知症と摂食障害
誤嚥の原因になる咽頭相の嚥下障害
さらに 口腔相の嚥下障害(口に物をため込む) 食事拒否 急性疾患合併後の後遺症
認知症と肺炎
老健施設での研究 入所者の3人に2人が1年間で何らかの感染症 うち呼吸器感染症が約3割
進行した認知症患者では
老健施設での研究 240人中154人(64%)が死亡前の6カ月に肺炎を疑うエピソード
126人(53%)は死亡前の30日以内に肺炎合併
他の老健施設の研究
323人中47%が18カ月間の経過中に肺炎合併
肺炎発症すると6か月後に47%が死亡
発熱を呈すると6か月後に45%死亡
認知症はCOVID-19を重篤にする
1956643人の登録者 5725人がアルツハイマー病 7334人がCOVID-19の診断
結果 アルツハイマー病では重篤な合併症のリスクが上昇 死亡率が有意に上昇
理由
リスクが共通 高齢、基礎疾患、長期療養施設など
アポリポ蛋白Eの遺伝子多型 にかよっている
せん妄や限局的な機能低下などの非典型的な非呼吸器症状を呈する傾向
コミュニケーション能力低下
認知症とサルコペニア
サルコペニア有病率
アルツハイマー病 23.6%
健常者 9.1%
認知症と栄養障害
低アルブミン血症は経口摂取の不足する進行期に入った段階で診られる
ビタミンB群等の欠乏症は認知早期や軽度認知機能障害でもしばしばみられる
パーキンソン病や脳血管障害ではビタミンDの低下が早期からみられる
認知症と体重
認知症では発症10年前から体重が低下する
認知症の生命予後 10年生存率 診断から2年以内の死亡
アルツハイマー病 18.9% 43%
血管性認知症 13.2% 13%
レビー小体型認知症 10.4% 10%
前頭側頭型認知症 2.2% 18%
2023-09-17 07:35:58
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どう対処する?患者・家族からのこんな要求 練馬光が丘病院 総合救急診療科 北井勇也先生
こんな要求でこまったことはありませんか?
入院させてほしい
検査入院させてほしい とことん調べてほしい血液検査をしてほしい
点滴してほしい あの先生に診てもらいたい 早く帰らせてほしい これ以上の検査はやりたくない
Take Home messages
1傾聴 共感の態度
2誠心誠意
3自制心
思うように診察を勧めたい・・・
最初に自分の考えを言わない、押し付けない
相手の出方に応じて動く:「後だしじゃんけん」
傾聴 共感を示す
次なる道筋を示す
救急外来で人間力を鍛えよ
人格形成の場
徳を積む
情けは人のためならず
3つの事例
Case1入院させたい希望の強い80才男性の家族
Case2検査希望の強い発熱主訴の20才女性の親
Case3腹痛で来院したが帰宅願望の強い50才男性
Case1
軽度の認知機能低下はあるが、ADL自立、独居 高血圧で近医かかりつけ
自宅で血圧測定で収縮期血圧170前後の高かった
頭がふわっとした感じがしていつもと違う感じがする
脳梗塞が心配で受診
来院時の血圧150台、ふわっとした感じ以外の症状なし
神経学的所見含めて異常所見なし
家族 入院させたい
1人暮らしで心配。1日だけでも入院させてください
血圧も落ち着いているし、異常もないので家で様子をみて大丈夫です 医師
さてどうするか?
1心配 具体的に何が心配なのかを引き出す
1人暮らし?病気?血圧?
21日だけ それだけで解決するかを見極める
めまい 頭部外傷 アナフィラキシー
入院すれば元気になって安心できる?
入院関連機能障害のリスクを考える
原疾患によらない入院中の安静臥床が原因のADL低下
患者に関連する要因 医療ケアに関する要因
年齢(特に80歳以上) 長期臥床
ADLの依存度 ポリファーマシー
認知機能障害 経尿道カテーテル
身体的フレイル 静脈ライン
低アルブミン血症 身体抑制
不適切な食事制限
せん妄のリスクを考える
せん妄のリスク 引き起こされる事象
年齢 入院の長期化
認知症 認知・身体機能の低下
重症疾患 施設入所率の増加
視力障害 死亡率の増加
経尿道カテーテル
ポリファーマシー
低アルブミン血症
帰宅前提で診察しない
無理なマネージメントをやりかねない 目的が帰宅させることにいつの間にか変わっている
入院適応が本当にないかをとことん考える
一つの例
1 まず何が不安なのかを明確化する 傾聴・共感
2 自宅で独居生活ができていることのすばらしさを素直に伝える
3 入院時関連機能障害やせん妄の話をする こうなったらもったいない
4 想定されるナチュラルコースをしっかりと伝える そうじゃないときは受診して
5 入院することが必ず得策でないかもしれないと伝える
「困ったときはいつでも受診していいですよ」と声掛け大事
Case2検査希望の強い発熱主訴の20才女性の親
特に基礎疾患のない、将来健康な20才女性
前日から発熱、鼻汁、咽頭痛、関節痛、倦怠感が出現
手持ちの解熱剤鎮痛剤を使用するも高熱が続いている
親に連れられてER受診
咽頭発赤はあるが気道緊急を示唆する所見はなし
飲水は出来ている
なにかしらのウイルス感染(多臓器に症状)だと思います 医師
ゆっくり休んで様子をみましょう
家族 こんなにつらそうなので点滴してください
変な病気だと困るのでけんさして
1つらそう 全力で共感する 残念ながらどうすることもできない
2点滴 元気になる点滴はない
3検査 炎症反応が上がっているかどうかぐらい
一つの例
1 高熱が続いてつらい時期ですね 傾聴・共感
2 検査や点滴を希望する理由を確認する
3 現状のみたてと想定しうるナチュラルコースをしっかりと伝える
4 検査・点滴する意義が乏しい可能性が高いことを伝える
5 想定の経過から外れる場合には検査や点滴が必要になる
今は症状和らげる薬で様子を見てみませんか?
それでも食い下がられたら・・・
症状改善するかはわかりませんが、少し点滴をしていきましょうか
無理に争わない 医学的に△でも患者が納得〇?
入院することが必ず得策でないかもしれないと伝える
「困ったときはいつでも受診していいですよ」と声掛け大事
Case3腹痛で来院したが帰宅願望の強い50才男性
高血圧、脂質異常症の既往のある50才男性
タバコのにおいがぷんぷんしてくる
朝食後に激しい心窩部痛が出現
痛みが全く改善しないためER受診
Walk-in受診したが苦悶様症状で冷や汗も欠いている リスク多く 症状から多くの致死的疾患の除外必要
鎮痛しながら血液検査をまっていた
CT検査を予定していたが、ER混雑していて検査が進まない
周りのスタッフに大声でしきりに文句を言っている
返りたいなら帰ればいい
診療契約
患者が診察を申し入れ(診療契約の申込み)それに対して診察を開始すれば(診療契約の承諾と同一視される)
患者と病院・医師との間に診療契約が成立する
診療開始前の患者であればあえて引き留める必要はないが・・・
診療開始後で患者にとって帰宅が不利益となるなら説得を試みる
どうする?
患者は帰宅可能な状態か
致死的疾患は除外できているか
帰ることの不利益を本当に理解できているか
他に患者に関わる家族や親せきはいないのか
3つの心構え
1同じ目標に向かっていることを共有する
つらい思いで受診されたあなたの助けになりたいと思っています、そのための方法を一緒にかんがえましょう
2要求の真意を確認する
どうしても外せない仕事がある?
家の戸締りができていない
ペットの世話がある
自分が介護している認知症の親が1人でいる
帰宅の判断はいろんな観点から・・・
多職種を巻き込む
どの立場からみても、患者の説得の努力はなされている
患者は自分の状況を理解している
やりとりの内容を医師、看護師とも記録に残しておく
3同じ感情の土俵に立たない 地蔵の境地
2023-09-16 06:01:38
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