



どう対処する?患者・家族からのこんな要求 練馬光が丘病院 総合救急診療科 北井勇也先生
こんな要求でこまったことはありませんか?
入院させてほしい
検査入院させてほしい とことん調べてほしい血液検査をしてほしい
点滴してほしい あの先生に診てもらいたい 早く帰らせてほしい これ以上の検査はやりたくない
Take Home messages
1傾聴 共感の態度
2誠心誠意
3自制心
思うように診察を勧めたい・・・
最初に自分の考えを言わない、押し付けない
相手の出方に応じて動く:「後だしじゃんけん」
傾聴 共感を示す
次なる道筋を示す
救急外来で人間力を鍛えよ
人格形成の場
徳を積む
情けは人のためならず
3つの事例
Case1入院させたい希望の強い80才男性の家族
Case2検査希望の強い発熱主訴の20才女性の親
Case3腹痛で来院したが帰宅願望の強い50才男性
Case1
軽度の認知機能低下はあるが、ADL自立、独居 高血圧で近医かかりつけ
自宅で血圧測定で収縮期血圧170前後の高かった
頭がふわっとした感じがしていつもと違う感じがする
脳梗塞が心配で受診
来院時の血圧150台、ふわっとした感じ以外の症状なし
神経学的所見含めて異常所見なし
家族 入院させたい
1人暮らしで心配。1日だけでも入院させてください
血圧も落ち着いているし、異常もないので家で様子をみて大丈夫です 医師
さてどうするか?
1心配 具体的に何が心配なのかを引き出す
1人暮らし?病気?血圧?
21日だけ それだけで解決するかを見極める
めまい 頭部外傷 アナフィラキシー
入院すれば元気になって安心できる?
入院関連機能障害のリスクを考える
原疾患によらない入院中の安静臥床が原因のADL低下
患者に関連する要因 医療ケアに関する要因
年齢(特に80歳以上) 長期臥床
ADLの依存度 ポリファーマシー
認知機能障害 経尿道カテーテル
身体的フレイル 静脈ライン
低アルブミン血症 身体抑制
不適切な食事制限
せん妄のリスクを考える
せん妄のリスク 引き起こされる事象
年齢 入院の長期化
認知症 認知・身体機能の低下
重症疾患 施設入所率の増加
視力障害 死亡率の増加
経尿道カテーテル
ポリファーマシー
低アルブミン血症
帰宅前提で診察しない
無理なマネージメントをやりかねない 目的が帰宅させることにいつの間にか変わっている
入院適応が本当にないかをとことん考える
一つの例
1 まず何が不安なのかを明確化する 傾聴・共感
2 自宅で独居生活ができていることのすばらしさを素直に伝える
3 入院時関連機能障害やせん妄の話をする こうなったらもったいない
4 想定されるナチュラルコースをしっかりと伝える そうじゃないときは受診して
5 入院することが必ず得策でないかもしれないと伝える
「困ったときはいつでも受診していいですよ」と声掛け大事
Case2検査希望の強い発熱主訴の20才女性の親
特に基礎疾患のない、将来健康な20才女性
前日から発熱、鼻汁、咽頭痛、関節痛、倦怠感が出現
手持ちの解熱剤鎮痛剤を使用するも高熱が続いている
親に連れられてER受診
咽頭発赤はあるが気道緊急を示唆する所見はなし
飲水は出来ている
なにかしらのウイルス感染(多臓器に症状)だと思います 医師
ゆっくり休んで様子をみましょう
家族 こんなにつらそうなので点滴してください
変な病気だと困るのでけんさして
1つらそう 全力で共感する 残念ながらどうすることもできない
2点滴 元気になる点滴はない
3検査 炎症反応が上がっているかどうかぐらい
一つの例
1 高熱が続いてつらい時期ですね 傾聴・共感
2 検査や点滴を希望する理由を確認する
3 現状のみたてと想定しうるナチュラルコースをしっかりと伝える
4 検査・点滴する意義が乏しい可能性が高いことを伝える
5 想定の経過から外れる場合には検査や点滴が必要になる
今は症状和らげる薬で様子を見てみませんか?
それでも食い下がられたら・・・
症状改善するかはわかりませんが、少し点滴をしていきましょうか
無理に争わない 医学的に△でも患者が納得〇?
入院することが必ず得策でないかもしれないと伝える
「困ったときはいつでも受診していいですよ」と声掛け大事
Case3腹痛で来院したが帰宅願望の強い50才男性
高血圧、脂質異常症の既往のある50才男性
タバコのにおいがぷんぷんしてくる
朝食後に激しい心窩部痛が出現
痛みが全く改善しないためER受診
Walk-in受診したが苦悶様症状で冷や汗も欠いている リスク多く 症状から多くの致死的疾患の除外必要
鎮痛しながら血液検査をまっていた
CT検査を予定していたが、ER混雑していて検査が進まない
周りのスタッフに大声でしきりに文句を言っている
返りたいなら帰ればいい
診療契約
患者が診察を申し入れ(診療契約の申込み)それに対して診察を開始すれば(診療契約の承諾と同一視される)
患者と病院・医師との間に診療契約が成立する
診療開始前の患者であればあえて引き留める必要はないが・・・
診療開始後で患者にとって帰宅が不利益となるなら説得を試みる
どうする?
患者は帰宅可能な状態か
致死的疾患は除外できているか
帰ることの不利益を本当に理解できているか
他に患者に関わる家族や親せきはいないのか
3つの心構え
1同じ目標に向かっていることを共有する
つらい思いで受診されたあなたの助けになりたいと思っています、そのための方法を一緒にかんがえましょう
2要求の真意を確認する
どうしても外せない仕事がある?
家の戸締りができていない
ペットの世話がある
自分が介護している認知症の親が1人でいる
帰宅の判断はいろんな観点から・・・
多職種を巻き込む
どの立場からみても、患者の説得の努力はなされている
患者は自分の状況を理解している
やりとりの内容を医師、看護師とも記録に残しておく
3同じ感情の土俵に立たない 地蔵の境地
2023-09-16 06:01:38
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