第34回都島メデカルカンファレンスを聴きに大阪市立総合医療センターに行ってきました
地域医療機関から紹介され“認知症”を考慮した診療を要した症例に関する検討 初期急病診療部長 山口利昌先生
一部のみ列挙
認知症は2025年には約675万人(有病率18.5%) 5.4人に1人
ICD-10による認知症の診断基準の要約
G1 以下の各項目を示す証拠が存在する
1記憶力の低下 新しい事象に関する記憶力の減退 記憶力の低下は客観的に確認されるべきである
2認知能力の低下 判断・思考に関する能力の低下や情報処理全般の悪化
1・2により日常生活動作や遂行機能に支障をきたす
G2 周囲に対する認識(すなわち、意識混濁がない)ことが基準G1症例をはっきりと認証するには十分な
期間、保たれていること、せん妄のエピソードが重なっている場合には認知症の診断は保留
G3 次の1項目以上を認める
1情緒易変性
2易刺激性
3無感情
4社会的行動の粗雑化
G4 基準G1の性状が明かに6カ月以上存在して確定診断される
認知症診断の手順
認知症(広義)の疑い → MCI 軽度認知障害
↓
↓ 正常範囲内、加齢に基づくもの
↓ アルコール多飲、薬物、健忘症候群
↓ 急性発症、軽度の意識障害(せん妄)
↓ 機能性:うつ病(偽性認知症)、妄想性障害
↓ 身体疾患(代謝性疾患、内分泌系疾患、感染症)
↓ 脳外科的疾患(正常圧水頭症、慢性硬膜下血種)
認知症(狭義)の疑い
加齢と認知症 物忘れの違い
加齢による物忘れ 認知症による物忘れ
体験したこと 一部をわすれる すべてを忘れる
(例)朝ごはんのメニュー (例)朝ごはんを食べたことを自体
ものわすれの自覚 ある ない
探し物に対して 自分で努力してみつけようとする 誰かが盗ったなど、他人のせいにすることがある
日常生活への支障 ない ある
症状の進行 きわめて徐々に歯科進行しない 進行する
*Head tunting Sign(頭部振り返り現象)
家族の方を振り返って助けを求めるしぐさ 各種の認知症の中でアルツハイマー病が最も頻度が多い
アルツハイマー病は取り繕い 世渡り 上手
HDS-Rの評価中に何度振り返るかの検討
平均年齢 女性割合% HDSRスコアー HTS
アルツハイマー病 79.1才 65% 14.5 42回
AMCI 79.3才 63% 24.8 25回
DLB 77.9才 47% 15.1 15回
PSP 78.4才 38% 14.5 25回
VaD 73.8才 33% 20.5 17回
令和2年~4年後 救急外来患者
副病名に認知症と記載があった患者の主病名・病態
脱水症 5 主訴・症状 意識がおかしい 動けない 息苦しい
肺炎 4 動けない 胸が苦しい +発熱
尿路感染症 2
血糖値異常 2
転倒 1
認知症とのみ記載された患者の主訴・症状
意識がおかしい 元気がない ご飯をたべない 動けない 胸が苦しい 息苦しい
*症例提示 79才女性 意識障害 認知症みたい →肝性脳症 急性発症は他の疾患除外を
肝性脳症で認知症? アンモニアが脳内のアストロサイトでのアミロイド前駆物質蛋白質量増加
→アミロイドβ42増加
*高齢者 体重あたり細胞内液30%細胞外液20% 体重あたりの水分量 50%と最初から低い
成人 40% 20% 60%
乳幼児 40% 40% 80%
アルツハイマー型認知症の進行度と症候
増加する 転倒 誤嚥 発熱 咀嚼障害 排尿障害 悪心・腹痛 振戦
認知症と摂食障害
誤嚥の原因になる咽頭相の嚥下障害
さらに 口腔相の嚥下障害(口に物をため込む) 食事拒否 急性疾患合併後の後遺症
認知症と肺炎
老健施設での研究 入所者の3人に2人が1年間で何らかの感染症 うち呼吸器感染症が約3割
進行した認知症患者では
老健施設での研究 240人中154人(64%)が死亡前の6カ月に肺炎を疑うエピソード
126人(53%)は死亡前の30日以内に肺炎合併
他の老健施設の研究
323人中47%が18カ月間の経過中に肺炎合併
肺炎発症すると6か月後に47%が死亡
発熱を呈すると6か月後に45%死亡
認知症はCOVID-19を重篤にする
1956643人の登録者 5725人がアルツハイマー病 7334人がCOVID-19の診断
結果 アルツハイマー病では重篤な合併症のリスクが上昇 死亡率が有意に上昇
理由
リスクが共通 高齢、基礎疾患、長期療養施設など
アポリポ蛋白Eの遺伝子多型 にかよっている
せん妄や限局的な機能低下などの非典型的な非呼吸器症状を呈する傾向
コミュニケーション能力低下
認知症とサルコペニア
サルコペニア有病率
アルツハイマー病 23.6%
健常者 9.1%
認知症と栄養障害
低アルブミン血症は経口摂取の不足する進行期に入った段階で診られる
ビタミンB群等の欠乏症は認知早期や軽度認知機能障害でもしばしばみられる
パーキンソン病や脳血管障害ではビタミンDの低下が早期からみられる
認知症と体重
認知症では発症10年前から体重が低下する
認知症の生命予後 10年生存率 診断から2年以内の死亡
アルツハイマー病 18.9% 43%
血管性認知症 13.2% 13%
レビー小体型認知症 10.4% 10%
前頭側頭型認知症 2.2% 18%
2023-09-17 07:35:58
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