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Web講演会  9月19日

Web講演会  9月19日

糖尿病治療の最終目標達成における初期SGLT2阻害剤の役割
自治医科大学附属さいたま医療センター 内分泌代謝内科 教授 原一雄先生

糖尿病診療の最終目標は健康寿命の延伸
健康寿命の指標としてQALYを採用
*質調整生存年(quality-adjusted life year, QALY)とは、疾病負荷の測定方法として一般的であり、生存における量と質の2点を評価する手法である。医療行為に対しての費用対効果を経済的に評価する技法として用いられる。1QALYは、完全に健康な1年間に相当する。QALYスコアは一般に1(完全な健康)から0(死亡)までの値を取る。もしある人の健康が完全ではないならば、その1年間は1未満のQALYとして算定され、死亡すれば0QALYと算定される。いくつかの状況ではマイナスのQALYも算定され、それはその健康状態が「死亡よりも悪い」ことを意味する。
糖尿病治療の健康寿命への影響を定量化
心筋梗塞 0.88 脳卒中 0.64 失明 0.60 末期腎不全 0.61 下肢切断 0.60
種々の合併症、副作用の包括的、長期的影響を評価
心不全の健康寿命への影響と予防の重要性
心不全による健康寿命短縮4.7年(男) >2,0 がん
            6.3年(女) >3.2 がん
心不全 ステージA 心不全の基礎疾患 糖尿病の状態から予防へ

EMPA-REG OUTCOME研究
SGLT2阻害剤が14%有意に3-POINT MACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)を減少させた
心不全による入院を35%有意に減少させた 
      心不全発現率
       ジャディアンス     プラセボ群
心不全なし   1.8%   (4225)  3.1% (2089)
心不全あり   10.4%   (462)  12.3%(244)

SGLT2欠損に起因する疾患:家族性腎性糖尿
SGLT2遺伝子突然変異による稀な疾患
血糖値が正常範囲でも尿中グルコース排泄がみられる 血糖値は正常 無症候性
尿細管機能不全や腎合併症の徴候はみられない 低血糖および体液量減少はまれ
ありふれたSGLT2遺伝子多型と尿糖排泄量
MAF 12,6%(糖代謝正常者) 10.1%(2型糖尿病)
rs993436A 

初期から長期間継続したSGLT2阻害の影響の推定
SGLT2遺伝子多型
ランダムに形成(配偶子)
rs9934336A(SGLT2低下型) rs9934336G(SGLT2通所型)
  ↓   行楽要因↓↓ 因果関係逆転↓↓            ↓
  ↓                    ↓
  疾患                  疾患
  頻度                  頻度

SGLT2低下型保持者の心不全リスクは?
UKバイオバンク(416737人)を利用した解析結果
SGLT2遺伝子多型の種類
rs9934336     0.96     有意に低い
rs3116150     0.96
組み合わせ     0.97

SGLT2阻害の長期的意義(私見)
EMPRISE研究 心不全ステージAから心不全予防
   EMPA-REG研究 心不全ステージBから
      Emperor-Preserved  ステージCから
           Emperor-Reduced ステージC,Dから
メンデルランダム化 ステージA前から→

ステージAからSGLT2阻害剤で心不全予防を
エンパグリフロジンの血糖改善の特徴
TIR(70-180mg/dl)の変化  TIR     1日目   28日目
プラセボ   21名     52.1%    57.9%  59.4%
ジャディアンス 20名    52%     66.7%  77.5%へ

SGLT2阻害税のDPP4阻害剤に対する先行投与について
DPP4阻害剤はDPP4を賦活化してGLP-1、GIPを活性化する
 正常な膵β細胞は
 Gsが主なインスリン分泌促進作用を担う    
 慢性高血糖がある膵β細胞
アセチルコリン 遊離脂肪酸           ではGsよりもGqが主な分泌促進作用を担う
        GLP-1      GIP・GLP-1  Gqを使えないGIPは作用が減弱
        ↓         Gs  
        Gq        cAMP
    IP3  DAG         ↓
 Caイオン   ↓        PKA Epac2
     ↓   PKC       インスリン分泌
      インスリン分泌     

 
慢性的に高血糖状態にある膵β細胞において、GLP-1受容体はGqシグナルを用いることでインスリン分泌 作用を発揮するが、GIP受容体はGqシグナルを活性化しないため効果は減弱する 

インクレチン効果の減弱  
SGLT2阻害剤を先行投与した臨床試験の結果
0から12週  12週から24週                     12週   12-24週
DPP4阻害剤 →DPP4阻害剤+SGLT2阻害剤(n=17) 結果のみ HbA1C -1.81%   -0.65%
SGLT2阻害剤→DPP4阻害剤+SGLT2阻害剤(n=17)          -2.94%   -0.86%

SGLT2阻害薬を初期から継続して投与する意義
         インスリン抵抗性増大
           +        ⇒インスリン作用不足 食後高血糖⇒空腹時高血糖
インスリン分泌能低下                          ↓
  ↑
 インクレチン効果減弱     ←      ←    ←      ←
*SGLT2阻害剤がインスリン抵抗性増大抑制⇒病態への包括的影響⇒TIR増大

 慢性高血糖解除はDPP4阻害剤効果増大       
糖尿病治療薬の処方実態について 
                    BMI (肥満)
SGLT2阻害剤    ⇣ TZD
BG剤  
                         →     →   →年齢 (高齢)
                                  ⇣ SU
                                 ⇣ DPP4阻害剤
          AGI

今まではSGL2阻害剤は肥満で若年から壮年に使用される薬と考えられていたが・・・
高齢者
若年者より高率な合併症  老年症候群  薬物治療によるリスク増加
CKD           サルコペニア  低血糖
血管疾患         フレイル
心不全          認知機能低下
エンパグリフロジンの年令層別アウトカム
心不全による入院又は心血管死
イベント発生率 プラセボ  エンパグリフロジン
65歳未満    7%     5.5%
65-75     11%     7%
75以上     17%    10%   高齢の方が心不全抑制効果大?
副作用リスク メタ解析
性感染症のみ有意に高い
感染症の既往がある女性に多い 23% 男性では10%(既往あり)
高齢者におけるSGLT2阻害剤投与のリスク・ベネフィットは
年齢上がるほど心不全による入院又は心血管死 ベネフィット増加
性感染症の副作用は年齢に関係なくおこる

懸念されるサルコペニアは
慢性高血糖が
 細小血管合併症     インスリン GLP-1RA DPP4阻害剤
 大血管障害           ↓ 促進  
 酸化ストレス    抑制へ →筋肉の質と量  抑制  ←グリニド SU剤
 AGE/RAGE           ↑  抑制?
 インスリン抵抗性        BG剤 SGLT2阻害剤 TZD

*SGLT2阻害剤は低血糖リスクが低く、合併症への影響、インスリン抵抗性への影響への観点から
 プラスの影響が期待できるのではないか(私見)

高齢者2型糖尿病におけるSGLT2阻害剤の有効性・安全性の検討
EMPA―EMPA-ELDERLY試験(国内Phase4試験)
わが国の2型糖尿病患者を対象に、エンパグリフロジンの長期投与と血糖降下への効果、安全性、体組成・筋力などへの影響をプラセボと比較した多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間試験である。
【主たる組み入れ基準】
・65歳以上の日本人2型糖尿病患者
・食事療法、運動療法のみ、または経口血糖降下薬(ビグアナイド、DPP-4阻害薬など)で血糖コントロール不十分な患者
【評価項目】
主要評価項目:ベースラインから52週間後までのHbA1c変化量
副次評価項目:ベースラインから52週間後までの体組成(筋肉量、体脂肪量、徐脂肪量など)の変化量、握力の変化量など
【対象患者の背景】(127例)
患者数:プラセボ(63例)、エンパグリフロジン(64例)
年齢平均:プラセボ(74.0歳)、エンパグリフロジン(74.2歳)
平均ベースラインBMI:プラセボ(25.4)、エンパグリフロジン(25.7)
(*BMI22未満の痩身者は非対象として除外)
罹病歴平均:プラセボ(11.8年)、エンパグリフロジン(12.4年)
HbA1c平均:プラセボ(7.6%)、エンパグリフロジン(7.6%)
主な結果
ベースラインから52週間後までのHbA1c変化量推移は、プラセボ群と比べエンパグリフロジン群はHbA1cの低下が52週目まで続いていた。
HbA1c調整平均変化量では、プラセボ群-0.12%に対し、エンパグリフロジン群では-0.69%(調整平均の差-0.57%)とエンパグリフロジン群が有意に低下していた(p<0.0001)。
52週後のベースラインからの体重変化では、プラセボ群が-0.90kg、エンパグリフロジン群が-3.27kg(調整平均の差-2.37kg)とエンパグリフロジン群で有意に低下していた(p<0.0001)。
体組成では、体脂肪についてプラセボ群で+0.08kg、エンパグリフロジン群で-1.77kg(調整平均の差-1.84kg)と体脂肪で大きく変化がみられた(p<0.0001)。

筋力について、握力ではプラセボ群で-0.6kg、エンパグリフロジン群で-0.9kg(調整平均の差-0.3kg)と大きな差はなかった(p<0.4208)。また、5回椅子立ち上がりテスト(秒数)でもプラセボ群で-0.9秒、エンパグリフロジン群で-0.9秒(調整平均の差0秒)と差はなかった(p<0.9276)。
有害事象としては、重症度の軽い低血糖がプラセボ群、エンパグリフロジン群で各1例ずつ報告があったが、エンパグリフロジン群では死亡などは報告されなかった。
以上の結果を踏まえ、「高齢者においても、エンパグリフロジンは血糖コントロールを有意に改善した。また、脂肪量を減らすことで体重を低下させると同時に筋肉量減少などの変化は、プラセボ群と比較し、変化が認められなかった。エンパグリフロジンは忍容性も良好で、新たな有害事象もなかった
SGLT2阻害剤のリスクとベネフィット
リスク                 ベネフィット 高齢者
DKA(1000人年あたり1人)  <<< 心血管死 17人 ↓ 全死亡 34人↓非致死性心筋梗塞14人↓
サルコペニア              心不全 >30人 ↓ 細小血管合併症発症進展阻止 
性感染症                末期腎不全>26人
*BMIに関係なくSGLT2阻害剤効果あり(メタ解析)

 

2023-09-20 05:33:55

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