老年医学のすすめー5つのMで実践する老年医学の原則―
ハーバード大学マサチューセッツ総合病院 緩和老年医学科指導医 樋口雅也先生
Geriatrics(老年医学)とは?
加齢による多疾患併存(マルモ)・老年症候群に適切に対応
身体機能低下を予防・回復を助け
患者の自立とQOLの向上を目指す
+
家族・介護のサポート
多職種チームによるケア
ケース 85才女性
高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の既往あり、昨日救急外来に発熱、呼吸困難で搬送。肺炎の疑いで入院
適切な抗生剤で肺炎は治ったが、すでに自立歩行できず、経口摂取も少なく、独居していた自宅に戻ることは出来なくなった・・・
高齢者診療・ケア
苦手意識、難しい、複雑、時間がかかる すっくりしない、エビデンスの限界
病気は治ったのに、患者自身は一向に良くならない
病気 → 治す の限界 思考停止
なぜ老年医学を学ぶことは大切?
患者は医療者を選べない→すべての医療者の老年医学スキルアップが欠かせない
Geriatrics(老年医学)を学ぶことで
壁にぶつかったときに考えを続けるためのヒント
カオスの状態でも全体を理解する、俯瞰するための考えの型
↓
高齢者への医療・ケアに向きく合う人の背中をそっと支えてくれる
5つのM
Mind/Mental(認知・精神) 認知機能やメンタル問題 認知症 せん妄 抑うつ
Mobility (モビリティ) 歩行障害 転倒 負傷予防 運動機能の維持・向上
Medication (投薬) ポリファーマシー、処方中止(減薬)処方の適正化、薬剤副作用と薬剤費負担の軽減
Multi-Complexity 複雑症例、多疾患併存、さまざまな認知身体機能低下 複雑な医学的
(複数のコンプレックスな問題) 精神的社会的状況(SDHを考慮した総合的評価と介入)
Matters most(肝心なことは何か)「それ本当に意味がありますか?」「患者家族のためになっていますか?」
など、個々の患者や家族の意向に沿った医療目標(ACP:アドバンス・ケ
ア・プランニング)やケア
表にして考えると
認知・こころ / 身体機能 日常生活動作
歩行・移動
嚥下・咀嚼 排泄機能
中心に多疾患併存
医療・ケアのおとしどころ
クスリ / 困っていること
大切なこと・生きがい
時間が・・・足りません
簡易高齢者アセスメント(DEEP-IN)を使ってみる
Dementia/Depression/Delirium+Drug (認知+薬)
Eye&Ear (聴力+視力)
Physical function &F(p)all (身体機能・転倒)
Incontinence (排泄機能・失禁)
Nutrition (栄養、体重減少)
ケース 90才男性
90才独居男性 新規患者にて初めて外来に
既往相として安定した高血圧と糖尿病。善意が退職したため、新たなかかりつけ医を希望し、受診した
ポイント
コモンなことはコモンに起こる
高齢者診療のキモ 老年症候群
コモンなことに狙い撃ち
せんもう 認知機能低下 転倒 失禁 抑うつ 聴力・視力障害 体重減少 嚥下障害
ポリファーマシー 機能障害・フレイル 多疾患併存
ケース2にDEEP-INを実践してみると・・
90才 独居男性 認知症は指摘されたことはない
視力・聴力ともに日常生活に多少支障をきたす程度の障害・ADLは自立
転倒歴はないものの歩行安定せず、杖歩行
服薬記憶が少し曖昧(お薬手帳は持参)数種類の薬は使用目的不明
また高齢者で副作用のリスクが高い薬が3種類(NSAIDs、ベンゾジアゼピン、抗ヒスタミン入りの風邪薬)
尿、便失禁も夜ベッドに入ってから夜間に2回ほどトイレに
1年で5kgの体重低下と食欲低下あり
既往相としては安定した高血圧と糖尿病として前医からいわれている患者が、新たなかかりつけ医を希望して
受診した
まとめ
Geriatrics(老年医学)とは、
5つのMで高齢者への医療・ケアをよりよいものにする型
老年医学を学ぶことはあなたの医療・ケア実践を支えます
限られた時間でも老年医学は実践できる DEEP-INを実践してみると・
2023-09-24 05:35:34
| コメント(0)