糖尿病合併高血圧の病態から降圧薬の選択を考える 大阪けいさつ病院 糖尿病内分泌代謝内科部長 安田哲行先生
阪大1内糖研の同門の安田先生(阪大では一緒になることはありませんでしたが)臨床が忙しいにも関わらず、よく勉強されており、多くの論文も読まれて、いつも新しい知見を入れらての理論だった講演会で、勉強になります。また臨床に対する真摯な姿勢には頭が下がります。
一部のみ列挙
JSH2025ガイドラインでは
1降圧目標
降圧目標 診察時血圧 130/80未満 家庭血圧 125/75未満
糖尿病患者での厳格な降圧療法vs標準的な降圧療法 システマティックレビューおよびメタ解析
8研究 糖尿病患者16133人 18歳以上 130/80未満
複合心血管イベント 0.844
冠動脈イベント 0.833
脳卒中 0.780
全死亡 0.720
心血管死 0.618
有害事象 2.576
2型糖尿病に対する厳格な降圧治療の影響 N Eng J Med 2025
収縮期血圧120未満 ACE阻害剤/ARB→サイアザイド→CCB→BB(その他)
エンドポイント 4 point MACE(非致死的心筋梗塞 非致死的脳卒中 心不全治療+入院 心血管死)
121.6 vs 133.2 21%有意に減少させた 厳格な降圧療法が心血管イベントを抑制
しかし症候性低血圧 7.92倍 K>5.5 1.41倍
過度な降圧による注意すべき病態
自律神経障害による起立性低血圧 CKD、腎動脈狭窄症患者でのAKI(急性腎障害)
ADLの低下した高齢者
ADLのカテゴリーで降圧目標を変えている
フレイル~要介護 要介護 エンドオブステージ
140未満 150未満 140‐160
120未満は降圧薬減量へ 降圧薬段階的減量
2治療開始基準
糖尿病があればリスク3層になる 高リスク
高値血圧 130-139/80-89 高血圧140/90以上
↓高リスク ↓低中リスク ↓ 高リスク
計画的な生活習慣の改善 計画的かつ厳格な生活習慣の改善および直ちに薬物治療開始
↓
1か月以内に再評価
↓
十分な降圧がなければ厳格な生活習慣の改善および直ちに薬物治療開始
3降圧薬の選択
降圧療法
低中等リスク 高リスク1度高血圧 2度3度高血圧
↓ ↓
STEP1 降圧目標との差、降圧速度の忍容性 合併症など総合的に判断
G1降圧薬の中から1つ ↓
G1降圧薬の中から1つ投与 ↓
↓
STEP2 ↓
G1降圧薬から2剤併用 病態に応じてG2降圧薬も用いる
↓
STEP3
原則としてサイアザイド系利尿剤を投与
↓
生活習慣や薬物療法の問題点を検討して対策を
専門医紹介を考慮
降圧薬の併用STEPにおけるグループ分類
G1 a 長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬 忍容性に優れる
RA系阻害剤(ARB、ACE阻害剤)
b 少量のサイアザイド系利尿剤 STEP1から病態に応じて選択する 現状本来投与すべき病態へ
β遮断薬(ビソプロロノール カルベジロール) 投与されておらず積極的に使用
することが望ましい
G2 アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害(ARNI) 降圧薬治療STEP2、STEP3
MR拮抗薬 で病態に応じて選択
HTにおける脳心血管病予防のエビデンスなし
糖尿病合併高血圧患者におけるRAS系阻害剤vsカルシウム拮抗薬orサイアザイド系利尿薬 Hypertensions Res 2025
薬剤間にイベント抑制に有意差なし (高アルブミン尿のサブグループ解析で末期腎不全のみに有意差あり)
*ARBのイベルサルタン、ロサルタンの腎保護への影響が証明されている 2001年 IDNT・RENAAL研究
胸部レントゲン・心電図、eGFR、UACR、NTproBNP、心エコーなど試行して薬剤適応を決めるべし
積極的適応 禁忌
長時間作用型
ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬 狭心症 脳血管障害 左室肥大
ARB/ACE阻害剤 脳血管障害 左室肥大 心筋梗塞後 腎動脈狭窄 高K血症
左室駆出率の低下した心不全
蛋白尿/微量アルブミン尿を有するCKD
サイアザイド系利尿剤 脳血管障害 体液貯留 痛風 耐糖能異常 妊娠
β遮断薬 狭心症 心筋梗塞後 喘息 COPD 耐糖能異常
左室駆出率の低下した心不全
大動脈解離 胸部大動脈瘤
血圧を調整する因子
腎からの食塩排泄能 食塩摂取量 交感神経機能 RAAS RAAS以外の 血管平滑筋の細胞膜異常
血管作動性物質
体液量 心収縮力 心泊数 血管緊張調節
血圧 = 心拍出量 × 末梢血管抵抗
*糖尿病は腎障害 腎からの食塩排泄能 交感神経機能
動脈硬化 血管平滑筋の細胞膜異常 に影響
または肥満は 選択的インスリン抵抗性・高インスリン血症
腎からの食塩排泄能 食塩摂取量 交感神経機能 RAAS RAAS以外の 血管平滑筋の細胞膜異常
血管作動性物質
すべてに影響する
RAS系阻害剤は
RAS系の活性化による血圧上昇
アンギオテンシノーゲン
↓ レニン
アンギオテンシン1
↓ ACE
アンギオテンシン2
↓
AT1受容体
口渇中枢刺激 Na貯留 アルドステロン 心収縮力増強 血管収縮 交感神経刺激
バソプレッシン分泌 輸出細動脈収縮 合成 分泌
体液量 心収縮力 心泊数 血管緊張調節
MR受容体は腎・心臓・血管の非上皮組織にも分布しており
血行動態のみならず炎症や線維化プロセスを促進することで心血管疾患・CKDに影響することがわかっている
MRの活性化はRA以外でも種々の経路を介して行われる
高血糖、高血圧、肥満、脂質異常、過剰な食塩摂取などは、アルドステロン依存性・非依存性の経路でMRを過剰活性化する
塩分摂取量の違いによりARB/ACE阻害剤の降圧・腎・心イベント抑制の影響の報告が多数されている
塩分摂取多いと降圧低下作用↓・腎・心イベント抑制効果↓
アルドステロン非依存的にMR活性が高まっている状態や低レニン状態ではARB作用は減弱される可能性が
ARNI(作用機序の詳細は省く)は
塩分過剰によりMR活性がたかまっている低レニン状態(バルサルタンの効果減弱がある状態)でもANP増加により降圧効果を発揮
ANP作用 血管拡張 アルドステロン合成分泌抑制
Na利尿作用 抑制→マキューラデンサでのNACL↑ 体液量増加 →腎灌流圧↑
*糖尿病患者では食塩感受性亢進(腎尿細管Na排泄が低下)し塩分過剰接取により高血圧をきたしやすい Kidney int 2023
近位尿細管 AGE、アルブミン尿が尿細管のROS産生を亢進→TGF‐βを介して
SGLT2の発現、NHEの活性化
ヘンレのループ ROSの増大により間質圧が低下しNKCC2活性化
遠位尿細管 高インスリン、交感神経活性によるNCCの活性化
集合管 RASの活性化、Rac1-MR-Sgk1系の活性化によるENac、Na-K-ATPaseの活性化
*DKDは輸入細動脈硬化 糸球体虚血 と糸球体過剰濾過(アルブミン尿)の病態が混在している
DKDは同一腎において糸球体過剰濾過~糸球体虚血の程度が様々
特に動脈硬化進展例でアルブミン尿がないDKD症例では虚血への配慮が重要
ARBに比べARNIは輸出・輸入細動脈を拡張させ糸球体濾過量を維持することで輸入細動脈硬化をきたしたDKD
患者でのARBによる糸球体虚血の弱点を補完する
*PRADIGM-HFトライアルや後ろ向き研究においてACE-IやARBからの切り替えでARNIは
HbA1Cを有意に改善した GLP-1の分泌上昇が関与か?
ARNIの好適症例(私見)
HFrEF合併
ACE-I/ARBで降圧不十分
塩分過剰摂取
レニン活性↓
ACE-I/ARB+サイアザイド系利尿薬からの切り替え
動脈硬化進展
血糖マネージメント不十分




2026-05-28 06:02:51
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