1型糖尿病における基礎インスリン調整の実際―低血糖回避と血糖変動抑制に向けた治療戦略―
南昌江内科クリニック/南糖尿病臨床研究センター 前田泰孝先生
インスリンの調整を要するCGMパターン
朝の高血糖
暁現象 起床前後におけるインスリン作用の不足
明け方(おおよそ3〜6時)にかけてインスリン不足などにより血糖値が自然に上昇し、起床時血糖が高くなる現
象を指します。就寝前の血糖値が高くなくても起こり(深夜から明け方にかけて血糖が10〜20mg/dL程度上昇す
る現象とされる)成長ホルモンやコルチゾールなど、早朝に増えるホルモンが関与し、インスリンの効きを弱め
血糖上昇を招くと考えられる
ソモジー効果 低血糖後の反跳性高血糖
インスリン療法中の人に多く、夜中に血糖が下がりすぎると、体がそれを防ごうとしてホルモンを出し、その結
果として早朝の血糖が高くなる
食後高血糖 追加インスリンの不足
追加インスリン効き遅れ
食後低血糖 残存インスリン時間
インスリンstacking
インスリンスタッキングは、まだ体の中で効いている速効型インスリンが残っているのに、
短い間隔で追加のインスリンを打ってしまい、インスリンの量が「積み重なって」しまうこと
を指します。特に食後や高血糖で不安になって、効き始める前に何度も修正打ちをする
体内に残っている「インスリンオンボード(IOB)」を計算に入れずに追加投与する
といった時に起こりやすく、その結果として数時間後に低血糖になりやすい点が問題になる
カーボカウントの指導
カーボカウントは、食事に含まれる「糖質量」を数えて、それに合わせてインスリン量を決める方法
日本では従来の食品交換表をベースにした指導に加えて、カーボカウントが選択肢として広く使われ始めている 大きく二段階に分けて指導
基礎カーボカウント 糖質量をだいたい一定にして、インスリンも一定にする方法
応用カーボカウント 食事ごとの糖質量と血糖値に合わせて、インスリン量を毎回調整する方法
食後血糖に与える脂質の影響
食事中の脂質量で血糖上昇パターンが変化する
1型糖尿病15名調べ
食事中の脂質量 Fat 0g 20g 40g 60g
ピーク時間 83㎎/dl 104 130 152 脂質60gでは240分まで食後高血糖が遷延した
脂質をかなり多くとらない限り遷延しない
異なる運動のタイプで血糖値は影響する
運動強度(種類)により血糖への影響は異なる
(有酸素運動は血糖を低下させる)
持久運動(有酸素運動)では血糖は低下します
瞬発運動や高強度インターバルトレーニング、レジスタンス運動では血糖が低下せず
上昇する可能性もある
高強度の運動(瞬発運動や高強度インターバルトレーニング、レジスタンス運動)では、インスリン拮抗ホルモンが活性化して肝臓からの糖放出が促進され、骨格筋での糖取り込みを上回ることで高血糖を来たす
特に食後高血糖を抑制するためには、過度にインスリン拮抗ホルモンを活性化しない有酸素運動が推奨
運動後のグルコース取り込みは、筋肉のグリコーゲン貯蔵を補給するために、数時間にわたり上昇したままになる
午後の中強度の運動 早期低血糖リスク+後期低血糖リスク 運動後7-11時間から始まり持続
アルコールによる血糖変動
飲酒でよく見られるCGMパターン
即時〜数時間の変動
糖質を多く含むお酒 ビールやカクテル、日本酒などは、飲酒後すぐに血糖が一時的に上昇し、その後急降下しやすいパターンが報告されている。
糖質の少ないお酒 焼酎やウイスキーなどは、血糖の「急な上昇」は少なく、むしろその後の低血糖リスクが問題になりやすいとされている
夜間〜翌朝のパターン
肝臓がアルコール処理を優先 肝臓が糖新生を抑えられるため、就寝中や明け方にかけて血糖がじわじわ低下し、CGMでは「ゆっくり下がるカーブ」や低血糖域への侵入として見えることがある
食事量が少ない飲酒
つまみが少ない、夕食を軽くして飲むなどの場合は、特に夜間低血糖が出やすく、CGMで70mg/dL未満の時間が増えることが
女性1型糖尿病における月経周期と血糖変動
月経周期では、エストロゲンとプロゲステロンというホルモンが大きく変動、このホルモン変化が、インスリン感受性や血糖の上がりやすさに影響する
各フェーズと血糖の傾向
卵胞期(月経終了後〜排卵前)エストロゲン優位 インスリンが効きやすく、血糖やや下がりやすい人も
排卵期 ホルモン急変 人により上がりやすさが変化
黄体期(月経前)プロゲステロン増加 インスリン抵抗性が増し、血糖が上がりやすい人が多い
月経期 ホルモン一時的低下 黄体期よりは下がりやすくなることも
糖尿病女性では、月経前に血糖が上がると答えた人が約7割という報告あり
冬に血糖が上がりやすい?
複数の研究でヘモグロビンA1cが夏より冬に有意に高くなることが示されている
日本のデータでも、HbA1cはおおむね「6〜9月に低く、1〜3月に高い」という季節変動が確認されている
「冬の血糖悪化」は、もちろん、クリスマスや正月、忘年会・新年会などで
高糖質・高脂肪の食事 飲酒 生活リズムの乱れ イベントが多いこともあるが、行事以外の主な原因も
寒さによるホルモン変化
寒冷ストレスで、コルチゾールなど「血糖を上げるホルモン」が増え、。インスリンが効きにくくなり、同じ食事量でも血糖が高くなりやすいとされる
インスリン感受性の季節変動 糖尿病の人は不足分を十分に補うほどインスリン分泌が増やせないため、結果としてHbA1cが冬に上がりやすくなります。
*スウェーデンの研究では、冬は夏よりインスリン感受性が約一割低いという結果が出ている
運動量の低下と体重変化
寒さで外出や運動が減り、筋肉での糖の取り込みが低下します。
同時に、秋冬は生理的にも「脂肪をため込みやすい」時期で、体重増加や内臓脂肪の増加がインスリン抵抗性をさらに悪化させる
感染症や体調不良
冬はインフルエンザなど感染症が増え、発熱や炎症でストレスホルモンが増加し、血糖は上がりやすくなる
低血糖の恐怖(FoH)と低血糖恐怖症
トラウマ(心的外傷)
低血糖体験 低血糖教育
↓
つらい症状 ↓ 過剰な脅し
恥ずかしい思い ↓ 受け手の感受性
心ない言葉
↓
低血糖予防のための → 低血糖の恐怖
適切な心配 FoH:Fear of hypoglycemia
不安障害(不安症)
低血糖恐怖症
適度な恐怖(適応的)
低血糖になりそうな状況を予測して、食事やインスリン量、運動を調整できる
危ないな」と感じたら、早めにブドウ糖を摂るなどの行動がとれる
強すぎる恐怖(非適応的・問題レベル)
低血糖が怖くて、あえて血糖を高めに保とうとしてしまう
夜間や外出、自動車運転などが極端に不安になる
また低血糖になったらどうしよう」という考えが頭から離れず、生活の幅が狭くなる
このように、恐怖が強くなりすぎると、不安障害の一つのクラスターとして扱えるレベルになる、と指摘されることもある
臨床試験(BRIGHT試験)
ランタスXRの投与開始後24週間の有効性と安全性をデグルデク群と比較する無作為化比較試験。試験には、2型糖尿病の成人患者929名が参加し、ランタスXRまたはデグルデク100単位/mLのいずれかをを1日1回投与した。
インスリン新規導入後の12週間は、患者と医師が個々人の最適な用量を設定するための重要な時期にあたるが、ランタスXR群はデグルデク群に比べ低血糖の発現件数は低かった。
第0~12週における低血糖の発現件数は、ランタスXR群はデグルデク群に比べ、70mg/dL以下の低血糖では23%、54mg/dL未満の低血糖では43%低い値だった。この期間中に低血糖を経験した患者数は、ランタスXR群はデグルデク群に比べ、70mg/dL以下の低血糖では26%、54mg/dL未満の低血糖では37%低い値だった。
24週間の試験期間中の低血糖は2群とも同程度
投与開始後第13週から第24週までの12週間の低血糖の患者数と発現件数は、2製剤ともほぼ同程度だった。
24週間の試験期間中に低血糖を日中または夜間に経験した患者数と発現件数は、ランタスXR群66.5%、デグルデク群69.0%と2群とも同程度だった。インスリン新規導入後の12週間の低血糖はランタスXRが優勢
インスリングラルギン(ランタスXR) と デグルデク(トレシーバー)
皮下組織 等電点沈殿 マルチヘキサマーという大きな集合体
↓ 体循環 ↓
緩徐に溶解 アルブミンと結合⇔解離
アルブミン濃度で効き方が変化する?
24時間で切れるイメージ 24-48時間で切れるイメージ
(私見) (私見)
*アルブミン濃度低くなると低血糖頻度増えるデーターが
まとめ(私見)
ランタスXは24時間ごとの単位調節が行いやすく、血糖変動に応じた基礎インスリン調整に適している
また、アルブミン結合しない作用特性から、血清アルブミン濃度の影響を受けにくい可能性があり、低血糖リスクへの配慮が必要な症例でも選択しやすい




2026-05-30 02:52:50
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