全般性不安症(GAD)-忘れ去られた不安神経症概念の再考―九州大学大学院医学研究院精神病態医学教授 中尾智博先生
一部のみ列挙
全般性不安症とは?
GADとは、次から次へと多数の出来事や活動に対して、過剰な不安と心配(予期憂慮)が出現し、またそれに伴う身体症状(自律神経症状等)があることで、日常生活に支障をきたす疾患である
制御困難な多数の出来事や活動に対する予期憂慮 予期憂慮に身体症状(以下の5つのうち3つ以上)を伴う
空き巣に入られたらどうしよう 落ち着きのなさ 緊張感 神経の高ぶり
子供が交通事故にあったらどうしよう 疲労しやすい
がんになったらどうしよう → 集中困難 心が空白になる
リストラされたらどうしよう 睡眠障害
筋肉の緊張
易怒性
↓
予期憂慮と身体症状により、日常生活に支障をきたす
GADの心配・不安の特徴
GADと病的ではない心配・不安の特徴
GADの心配・不安 病的ではない心配・不安
過剰な心配が、心理的(感情など) 過剰ではなく機能的な障害まで生じることは少ない
社会的(就労など)機能に意味のある ⇔ より緊急の課題が起れば、不安を後回しにできる
障害を生じる 身体症状を伴うことは少ない
GADの神経画像研究
システマティックレビューによって、GADに関する63の機能画像研究、26の構造画像研究が同定され、腹外側
前頭前皮質、背外側前頭前皮質、前帯状皮質、後頭頂領域、扁桃体に機能的・構造的な障害が認められた
GADと不安視苦痛を伴ううつ病の対比
項目 全般史不安症(GAD) 不全性苦痛を伴ううつ病
中心となる症状 不安、心配が主役 抑うつ「気分の落ち込み」が主役+不安
気分 常に不安・緊張 憂鬱+不安が混ざる
思考の特徴 悪いことばかり起きるのでは 過剰に心配 自分はダメだ+不安・焦燥
不安の内容 健康・仕事・家族などの日常の 将来の不安・焦り・落ち着かなさなど
あらゆること
身体症状 筋緊張・疲労・不眠・集中力困難 不眠・食欲低下 倦怠感 +焦燥
時間の経過 長期間持続(6か月以上が基準) うつ病エピソードの期間中に出現
感情の中心 不安が止まらない つらい・無気力 +不安で落ち着かない
行動傾向 心配し続ける 確認行動 動けないor 落ち着かずそわそわ
診断の軸 不安障害 気分障害(うつ病の一型)
診療の 考え方 不安の軽減(CBT・抗うつ薬・抗不安薬) うつ治療が中心+不安への対応
GADの源流は不安神経症であり、各種不安症の土台となる位置づけが妥当ではないだろうか?
不安症 不安症
パニック症 特定の恐怖症 → パニック症 特定の恐怖症 SAD
GAD SAD 土台にGADがあり重なっている
現在の位置づけ 本来あるべき位置づけ
GAD-7(Generalized Anxiety Disorder -7)日本語版(2018)
全くない 数日 半分以上 ほとんど毎日
0点 1点 2点 3点
この2週間、次のような問題にどのくらい頻繁に 悩まされていますか?
(1)緊張感、不安感または神経過敏を感じる □ □ □ □
(2)心配することを止められない、または心配をコントロールできない □ □ □ □
(3)いろいろなことを心配しすぎる □ □ □ □
(4)くつろぐことが難しい □ □ □ □
(5)じっとしていることができないほど落ち着かない □ □ □ □
(6)いらいらしがちであり、怒りっぽい □ □ □ □
(7)何か恐ろしいことがおこるのではないかと恐れを感じる □ □ □ □
あなたがいずれかの問題に一つでもチェックしているなら、それらの問題によって 仕事をしたり、家事をしたり、他の人と仲良くやっていくことが どのくらい困難になっていますか?
全く困難でない やや困難 困難 極端に困難
WFSBPガイドライン GADの推奨治療(抜粋)
治療内容 推奨内容 エビデンス A 推奨 1
SSRI エスシタロプラム(レクサプロ)パロキセチン(パキシル)はGADの第一選択薬
SNRI ベンラファキシン(イフェクサー)デュロキセチン(サインバルタは第一選択薬
MT1/MT2作動薬/5-HT2C拮抗薬 有効性は良好な結果
エビデンス A 推奨 2
ベンゾジアゼピン系 難治例で使用か(物質使用障害の既往無し)抗うつ薬の効果発現前併用
エビデンス B 推奨 2
認知行動療法(CBT) 待機群より有効だが、他の能動的治療との差はあきらかでない
*「全般不安症」に対するセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤の「イフェクサーSRカプセル37.5㎎、同75㎎」の国内における医薬品製造販売承認事項一部変更承認を取得 2026年3月23日
イフェクサーSRは日本で初めてGADに対して承認された唯一の治療剤。
イフェクサーSRはGADに対して世界80以上の国と地域で承認されており、海外の複数の治療ガイドライン2, 3, 4でも第一選択薬に位置付けられている。
GADの認知行動療法
心理教育
ケースフオーミュレーション
リラクゼーション
注意トレーンニング(身体症状から注意そらし練習)
認知再構成
イメージ(記憶)のかきなおし
行動実験
アクセプタンス&コミットメントセラピー(不安を受け入れ、今ここに注意を向ける)
世論調査(他の人たちがどう考えているを調べる)
再発予防
不安に対するリラクゼーション法(バタフライ・ハグ)
手を胸の前に交差させちょうちょのようなポーズにして手のひらで交互に胸をポンポンと軽く叩くことを繰り返す
GADの認知行動モデル(ケースフェーミュレーション)
日常における様々な出来事
↓
信念 さまざまなできごとは悪い方向に向かうに違いない
↓
最悪の事態が起きるイメージの想起 ← 認知再構成 イメージ書き直し
↓ ↑ ↓ 世論調査
↓ 不安・緊張のさらなる高まり ←ACT
行動実験 → 行動のバイアス ↓ ↑ ↓
↓ 注意バイアス 筋緊張 集中困難 ← 筋弛緩 呼吸法
反芻思考 ↑注意トレーニング 易疲労感 不眠 リラクゼーション
回避行動 ↑ ↑
↓ ⇔ ↑




2026-08-27 06:02:55
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