虫垂炎診療を3分で整理―重症化を示唆するサインとは?【おなかが痛い!そのときどうする?】
札幌医科大学 総合診療医学講座 准教授 三原弘先生
急性虫垂炎の新しい分類
単純性 穿孔や壊疽を伴わないもの
複雑性 壊疽、穿孔、腫瘍形成を伴うもの
汎発性 腹腔内全体に炎症が広がるもの
強力な補助指標 NLRとPCT
1 NLR 好中球/リンパ球比 ≧4.8 虫垂炎を示唆
複雑性ではさらに高値 8-9以上になる
*NLRの基本
NLR(Neutrophil-to-Lymphocyte Ratio)は、好中球÷リンパ球で計算されます。好中球は体内に侵入した細菌やウイルスに迅速に反応する自然免疫の細胞で、リンパ球はB細胞・T細胞・NK細胞などを含み、獲得免疫を担います。好中球が多くリンパ球が少ない場合、慢性的な炎症や免疫力低下を示すことがあります
NLRの目安
通常、好中球は白血球の約51%、リンパ球は約39%で、NLRは約1.3が一般的です。がんや炎症が進行すると、好中球が増加しリンパ球が減少するため、NLRは高くなります。臨床では、NLRが4以上の場合、がん患者の予後が悪化する可能性があると報告されています 。一方、健康維持や免疫力の目安としては、1.5以下を指すことが推奨される場合があります
NLRが高くなる原因
慢性炎症:がんや感染症、生活習慣病などで好中球が増加し、リンパ球が減少する
免疫力低下:栄養不足やストレス、加齢による免疫老化(immunosenescence)
急性感染症:細菌感染などで好中球が急増する
2 PCT プロカルシトニン
PCRが高いと複雑性(穿孔・壊疽)など重症度評価に有用
上昇は穿孔のリスクの増大を反映
*プロカルシトニン PCT
細菌感染や敗血症が疑われるときに参考にされる値です。ウイルス感染では上がりにくく、細菌感染の見極めに役立つとされています。細菌感染後は2時間から4時間ほどで上がり始めるとされ、CRPより早く変化を捉えやすい検査です。
見方の目安
施設で基準は少し違いますが、国内の検査情報では次のような目安が案内されています。
値の目安 意味の目安
0.05 ng/mL以下 基準範囲の例
0.3 ng/mL以下 基準範囲の例
0.5 ng/mL以上 細菌感染を疑う目安
2.0 ng/mL以上 重い感染の目安
複雑性虫垂炎を見抜く CT所見
壁造影欠損 造影CTにて虫垂の一部が造影されません(白くならない)
その他 CTで虫垂内に糞石の存在 虫垂周囲の遊離ガス(黒い領域)
明日からのアクション
1 右下腹部痛の第一印象 前屈みなどの様子を重視する
2 血液検査とNLR計算 WBCだけでなくNLRを計算する 4.8以上が目安
3 CTの凝視とPCT評価 CTでは虫垂壁の造影状態を凝視し、PCTで重症度を裏付ける
腹膜刺激症状とは?【おなかが痛い!そのときどうする?】 札幌医科大学 総合診療医学講座 准教授 三原弘先生
腹膜刺激症状の診察順番(視・触・打・反)
1視診 歩行姿勢 呼吸によるお腹の動きや表情をみる
2触診 まずは軽く触れる
3打診 ここで腹膜刺激徴候の有無を判断する(重要)
4反跳痛 情報が不足している場合のみ慎重に行う
→患者に与える肉体的苦痛・精神的苦痛が大きい手技で
一度激しい痛みを誘発させてしまうと、患者が警戒し腹壁を緊張させるため、その後の触診
などの正確な評価が困難になる
間接的な腹膜刺激徴候の活用
*咳嗽試験 咳払いによる腹圧の変化を利用して痛みが響くかチェック
*Heal drop test(踵落とし)体軸方向に生じる衝撃により腹膜全体に響く痛みを確認




2026-09-01 05:40:41
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